働く女性が増えるなか、育児休暇中の女性は、「復職後に育児と仕事との両立ができるか不安」が80.5%、「職場復帰できるか不安」が59.3%とかなり高い割合で「不安」を抱えている(第一生命経済研究所2014年「女性の継続就業に関するアンケート調査」)。一方の企業も、約半数の企業が女性社員の活躍や定着について「女性社員の意識(=ぶらさがり)」を課題として上げているという調べもある(エン・ジャパン株式会社2015年「企業の女性活躍実態調査」)。妊娠出産という本来なら喜ばしい出来事が、雇用の現場では「課題」になってしまうのはなぜか。産後の女性向けのケアプログラムを開発したNPO法人マドレボニータの創業者、吉岡マコさんに伺いました。(#1 「母親はずっと子どもと一緒にいるのが幸せ、それで満足すべき」という社会への疑問 から続く)

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吉岡マコさん

「仕事なんてそこそこでいい」となって当たり前

――産休制度や育休制度を利用している女性に対して、復帰後に「今後の職務や働き方などに関する面談を実施」する企業は46.1%でしたが、「特に行っていない」企業も41.8%という調査があります(三菱UFJリサーチ&コンサルティング、2015年「仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」)。企業側も育児休暇を取る女性にどう接していったらいいのか、悩んでいるのではないでしょうか。

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吉岡 女性が1人辞めてしまうと、それまで育成した人材を失うという意味でも、次の採用コストや教育コストという意味でも、企業側の損失は大きいですよね。育休制度ができたおかげで離職者は減ったけど、復職後の女性は余裕も体力もない、ましてパートナーとの協力体制もないとなると職場で自分のパフォーマンスを上げていこうなんて余裕は生まれないんですよね。「仕事なんてそこそこでいい」となって当たり前だと思います。

 

――育休明け直後はほとんどの女性がそういう状態ではないでしょうか。保育園に入所でき、待機児童問題をクリアできただけで一仕事終えたような感じすらあります。

吉岡 子どもをもつ女性が仕事で力を発揮していくためには、妊娠中から出産、産後にかけて、しかるべきケアが必要です。何のケアもしないから余裕がなくなってしまうわけですので、適切なケアと準備によって、この時期をマイナスではなくプラスにしていくこともできるはずです。

 私たちは、昨年「認定NPO法人」というステータスを取得し、「産後ケアをすべての家族に」を実現する為に、あらゆる社会のリソースを活かし、協働していくことを意識するようになりました。その中には当然、企業も重要な担い手として含まれるわけですが、人事戦略として産後ケアを導入するという「復職支援プログラム」を企業と組んで行なっています。企業から育休中の社員へのサポートが手薄になってしまうこの時期に、マドレボニータの産後ケア教室に参加し、その受講料を企業が負担するという仕組みです。体力を取り戻し、メンタルを安定させ、相談できる友達を得て、夫婦の協力体制を築けたら、モチベーション高く職場復帰するのは不可能なことではないのです。