「産後は赤ちゃんを抱っこし続けるので、腹筋や持久力が必要ですよ!」
フロアにリズムの良い音楽が流れ出すと、インストラクターがバランスボールに乗って弾みながら、参加者の母親たちに笑顔で声をかけた。全員がバランスボールに乗って弾み続け、脚を開いたり閉じたり、腕を上げたり下げたり。どんどん早く、動きも大きくなっていく。赤ちゃんを抱っこしたままバランスボールに乗って動き続けている母親も複数いた。
認定NPO法人マドレボニータが行っている、産後の母親の心身の回復を助けるためのバランスボールを使ったエクササイズ教室だ。北は北海道の旭川から南は山口まで、全国52カ所で開催されている。Googleが行った社会貢献活動に関するコンテストで賞をとったり、内閣府から「女性のチャレンジ賞」の表彰を受けたりと、産後ケア業界で知らない人はいないほど有名なNPOだ。文京区、北区、葛飾区、台東区などでは産後ケア事業としてマドレボニータの教室を受けることもできる。
想像以上にハードな有酸素運動
産後ケア教室は4回連続講座で産後約2カ月以降から参加でき、生後210日までの赤ちゃんなら同伴可能だ。前面が鏡張りになっている20畳ほどのフローリングスタジオの真ん中に2畳ほどのマットを置き、赤ちゃんを寝かせたり、遊ばせたりしながらプログラムを行う。この日は9組の母子が参加していた。
妊娠中、女性の体は約10カ月かけて出産のために様々な変化を起こし、そのために最低ひと月の養生が必要なことは以前に書いた(http://bunshun.jp/articles/-/4243)が、その後は回復に向けて体を整えていく必要がある。マドレボニータの産後ケア教室の内容は、東大卒業後、東大大学院で運動生理学を専攻した吉岡マコさんが、産後ケアに特化したリハビリプログラムとして自身の出産後に開発したものだ。
インストラクターが「毎日乳飲み子を抱え続けていると、視線が下がり、口角が下がりっぱなしになりますからね」と声をかけ、表情筋のストレッチを始めた。インストラクターの声掛けに従い、母親たちは赤ちゃんを抱いたり寝かしたりしてバランスボールに乗ったまま、「あめんぼあかいなあいうえお」などと笑顔で爽やかに声を出した。
筆者もエクササイズに参加したが、あの「ビリーズブートキャンプ」を思い出したほど相当ハードな有酸素運動で、心底驚いた。毎日3歳の息子を相手に鬼ごっこをしているというのに、全くついていけずギブアップしてしまった。