米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設に向け、辺野古市沿岸部の埋め立てが進んでいる中、新年早々、安倍首相の発言が物議を醸している。
安倍晋三 首相
「土砂を投入していくに当たって、あそこのサンゴについては移している」
NHK『日曜討論』 1月6日
辺野古の新基地建設に伴う海の埋め立てに関して、安倍晋三首相は6日に放送されたNHK『日曜討論』で「土砂を投入していくに当たって、あそこのサンゴについては移している。また絶滅危惧種が砂浜に存在していたが、これは砂をさらってしっかりと別の浜に移していくという環境の負担を抑える努力もしながら行っている」と発言したが、この発言が事実ではないことがわかった。
琉球新報によると、埋め立て海域全体では約7万4000群体の移植が必要になるが、7日までに移植が終わっているのは別海域のオキナワハマサンゴ9群体のみにとどまっているという。土砂が投入されている辺野古側の海域「区域2-1」からサンゴは移植していない(1月8日)。また、沖縄防衛局の事業で、貝類や甲殻類を手で採捕して移した事例はあるものの、「砂をさらって」別の浜に移す事業は実施されたことがない(琉球新報 1月8日)。こちらも事実ではなかったということになる。
琉球新報の社説は、安倍首相の発言について「一国の首相が自らフェイク(うそ)の発信者となることは許されない」「県民の意向を無視し違法を重ねて強行している工事の実態から国民の目をそらすため、意図的に印象操作を図っているのではないか」と強く批判した(1月9日)。
玉城デニー沖縄県知事の反論
玉城デニー 沖縄県知事
「現実はそうなっておりません。だから私たちは問題を提起しているのです」
ツイッター 1月7日
安倍首相の発言に対し、玉城デニー沖縄県知事はツイッターで反応。「現実はそうなっておりません」と安倍首相の発言内容を否定してみせた。
安倍総理…。
— 玉城デニー (@tamakidenny) 2019年1月6日
それは誰からのレクチャーでしょうか。現実はそうなっておりません。だから私たちは問題を提起しているのです。
沖縄防衛局は昨年12月、土砂投入が始まっていない埋め立て予定海域の約3万9600群体の移植許可を申請したが、沖縄県は許可していない。県側は「移植対象や移植先の選定が不適切」と指摘している(毎日新聞 1月10日)。また、県側は移植対象の希少サンゴをすべて移植してから着工することを政府に求めており、ごく一部を移植しただけで工事を進める政府の姿勢に反発を強めている(朝日新聞デジタル 1月10日)。
沖縄防衛局が移植対象となるのは直径1メートルより大きいサンゴと一部の小型サンゴで、そもそも土砂投入区域には沖縄防衛局の移植対象になるサンゴは存在していないという立場をとっている。そうなると安倍首相が言う「あそこのサンゴ」がますます何のことかわからなくなる。少なくとも現在土砂が投入されている海域でサンゴが移植されている事実はない。