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77%が産後うつに近い状態に

 産後の母親といえば、微笑みながら我が子に授乳する幸せいっぱいの母親像を思い浮かべる人も多いだろう。しかし、妊娠していない一般女性に比べるとうつ病を発症しやすく、その割合は10人に1人と言われている。産後のケアサービスを提供するNPO法人マドレボニータ(東京)の2016年の調査によると、産後2週〜1年の間に産後うつに近い状態になった人(医師の診断を受けていない人も含む)は77%にものぼる。

 いくら医療が進歩し、死亡率が減ったとはいえ、出産は母子共に命がけの作業だ。産後の母親の身体はボロボロで、子宮や産道が傷付き、産後24時間以内で約300ccも出血するといわれている。その後も慢性的な貧血状態や高血圧が続くうえ、妊娠・出産の影響で骨盤や股関節が緩みきり、普通に歩くことさえままならなくなるし(会陰切開をした場合も)、頭痛や腰痛、恥骨の痛みや尿漏れに悩まされる女性も多い。子宮機能の回復には6~8週間を要するため、基本的に産後ひと月の間は授乳や食事、トイレ以外は養生に努めることが大事といわれている。

産後うつになりやすい人の特徴とは?

 しかし、そうした状態でも、赤ちゃんが泣けば昼夜関係なく2、3時間おきに起きて授乳しなければならないし、なかには、部屋の掃除から夜遅く帰宅する夫の食事まで家事を一手に引き受けている母親も珍しくない。手伝ってくれる親や知人が近くにいないうえ、最もサポートを期待したい夫が長時間労働で帰宅が深夜だったりすると、必然的に“ワンオペ育児・家事”となり、心理的・物理的サポートを誰からも得られず、どんどん精神的に追い込まれてしまうのだ。

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©iStock.com

 特に高齢出産ともなると、20代の出産に比べて産後の身体の回復が遅い。すると、毎日の育児や家事についていけず、「どうしてできないんだ」と自分を責めてしまいがちだ。まじめで几帳面な性格であるほど、またバリバリ仕事をしていた女性ほど、思うようにいかない育児に挫折感を抱き、うつに陥りやすい。

「産後うつはホルモンバランスの乱れのせい」という見方は、近年否定されつつある。近所付き合いの希薄化、高齢出産の増加、共働き世帯の増加、うつ病有病率の増加など様々な社会的要因が複雑に絡み合い、産後うつを発症させると考えられている。