映画『夜明け』は、河辺に倒れていた青年(柳楽優弥)と、その青年を助けた男(小林薫)の物語。広瀬奈々子監督は、昨日までの自分を語らぬまま親子のような生活を始めたふたりの、目に見えない生の感情をあぶり出す作品に仕上げた。
「人の感情とは、時に自分でも説明することのできない複雑なものです。ト書きに書くことはできないし、スクリーンにも映りません。せりふや相手の表情に反応して役者の身体から表出したものを、カメラで掴みとっていきました」
是枝裕和、西川美和が立ち上げた映像作品の制作者集団「分福」からデビューを果たした広瀬監督。社会の中の小さな声や光の当たらない人へ目を向けていきたいという。
「本作では生きづらさや弱さを抱えた人間を描きました。回想に頼ることなく、ふたりの現在からそれぞれの過去の出来事を想わせることはできないか。観客の視点を利用しながら、人間がもつ二面性を表現したいと思いました」
役者を信じたことで、物語は大きなものに育ったという。
「柳楽さんは最後の場面で私のイメージを超えた芝居を見せてくれました。作品を生きたからこその表情で嬉しかった。そして、心が震えました」
INFORMATION
『夜明け』
1月18日より新宿ピカデリーほか、全国公開
https://yoake-movie.com/