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「すべてはA子がやったことです。」

 事実、法廷を指揮した杉田宗久裁判長は、かなり語気鋭く、男性を追及していた。

裁判長 被害少女やその兄(事件の目撃者とされていた)はあなたを好きでいたと思いますか?

男性 可愛がっていたので、好きだと思います。

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裁判長 A子さんはどう思っていると思いますか?

男性 別にケンカもするが、普通の親子だと思う。しかし、A子は私のことを恨んでいると思う。

裁判長 あなたは合意のもとでセックスしたのですよね。なぜ恨まれるの?

男性 分かりません。手のひらを返された。

裁判長 今回の事件はすべてA子さんのでっち上げだと思うのですか。あなたはもし、有罪判決だとしたら、かなり刑務所に入らなければいけません。それでもこの事件はウソだと言えますか?

男性 (今回の事件のことを)A子は近所や会社にまで噂を流し、会社は解雇され、私は陥れられた。普通の親なら近所に言わないし、隠しますよ。まったくのでっち上げです。

裁判長 被害者の証言、娘の証言を聞いて、ここまで巧妙にウソをつくと思っているのですか?

男性 すべてはA子がやったことです。

©iStock.com

裁判長 奥さんに対して、A子さんとの肉体関係をあなたはどのように説明したの?

男性 すべてを話したら、妻はかなり怒っていた。

裁判長 被害者に対する行為も、妻の姉(B子さんの大伯母)から何度も注意をされていたんですよね。あなたは何もしていないなら怒らなかったの?

男性 「いい加減にしろ」と何度も言いました。

裁判長 A子さんと肉体関係があったとき、あなたはどこに勤めていたの?

男性 25年前までは大手自動車会社。その後失業し、のちに別の会社に勤めました。自分は自動車関係の仕事しか知りません。

裁判長 それでは失業中も肉体関係があったのですか?

男性 日曜の昼間にありました。妻は美容院で仕事でした。

過去からも見える、複雑な家庭事情

 このようにA子さんが少女時代、男性と性的関係があったことは関係者間で争いがない。男性側の主張は「妻を選び、A子さんを選ばなかったことから、これを恨みに思い、自分の子供たちを使って、今回の事件をでっち上げた可能性がある」というものだった。

 だが、被害少女のB子さんが最初に被害を訴え出たのは、男性の妻の姉にあたる大伯母であって、A子さんではない。大伯母は事態の深刻さからA子さんと連絡を取り、渋る少女から少しずつ事情を聴き出したという経緯がある。その大伯母も検察側証人として出廷し、次のように証言している。

「(B子は)『おじいちゃんにお尻を触られた』と泣きながら言ってきた。私はA子の事件を知っていたので、すぐに連絡した。被告は問い詰められても、『どうでもいい』『勝手にしろ』と暴言を吐くばかりだった。なぜ認めないのか信じられない」