2020年に開催が迫る東京五輪。その招致をめぐる贈賄の容疑者として、当時の招致委員会理事長の竹田恒和・日本オリンピック委員会(JOC)会長がフランス司法当局から正式に捜査を開始された。疑惑を否定するはずの記者会見で飛び出した驚きの言葉を中心に、東京五輪招致をめぐる言葉を集めてみた。

竹田恒和 JOC会長
「私自身は契約に関して、いかなる意思決定プロセスにも関与していない」

産経新聞 1月15日

1月15日の記者会見での竹田恒和氏 ©時事通信社

 あらためて竹田氏の疑惑についておさらいしてみよう。仏司法当局は、竹田氏が理事長だった東京五輪招致委員会が2013年7月と10月の2回にわたって、シンガポールのコンサルタント会社、ブラック・タイディングス社に180万ユーロ(約2億3000万円)支払ったことを2015年末に把握、2016年に贈賄容疑で捜査を開始した。

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 仏司法当局は、支払いの一部が同社を通じてアフリカ票に影響力を持つ国際オリンピック委員会(IOC)委員で国際陸上競技連盟会長だったラミン・ディアク氏の息子、パパ・マッサタ氏に渡ったと見ている。2回目の送金はロビー活動における「成功報酬」として支払われたと見られている(産経ニュース 1月11日)。2016年に開催されたブラジル・リオデジャネイロ五輪では、ブラジル連邦検察が同国五輪委員会会長だったカルロス・ヌズマン氏をディアク氏への贈賄などの罪で逮捕したが、東京五輪招致疑惑とまったく同じ構造である。

ラミン・ディアク氏 ©Getty Images

 JOCは仏司法当局の捜査にあわせて調査委員会を立ち上げたが、2016年9月に日本の法律や仏刑法、国際オリンピック委員会の倫理規定に違反しないと結論づけた。竹田氏は昨年12月に仏司法当局の聴取を受けたが、「贈賄にあたることは何も行っていない」と説明した(産経ニュース 1月13日)。

会見の時間はわずか7分

 1月15日、東京都内で会見した竹田氏は、2016年のJOCの調査チームによる調査結果内容を説明。ブラック・タイディングス社とディアク氏父子との関係を知らなかったから日本の法において違法性はないと贈賄の疑いを否定し、「フランス当局の捜査に協力することで、潔白を証明したい」と締めくくった(朝日新聞デジタル 1月15日)。会見の時間はわずか7分。「フランス当局が調査中の案件のため」との理由で質疑には一切応じなかった。

 それにしても理事長が「いかなる意思決定プロセスにも関与していない」とはにわかには信じがたい。契約に関する稟議書には押印したことは認めているが、自分は何も知らない「お飾り」だったということを認めたのだろうか。なお、竹田氏のJOC会長としての報酬は月額130万円(年間1560万円)である(スポーツニッポン 2011年4月26日)。