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写真草創期の写真に共感する
なるほど、巷に溢れてふだん私たちの目に触れている写真とは似て非なる、オリジナルな視点と手法からなる写真作品が、今展には並ぶのだ。
そんな落合写真の質感を想像するよすがにしたく、共感している写真はないだろうかと問えば、世界で最初の写真集と言われる『自然の鉛筆』の名が挙がった。
写真術が発明された年号は公式には1839年とされる。その直後、1840年代に英国の研究家ヘンリー・フォックス・タルボットが、自身の撮った写真で編んだ本である。
「『自然の鉛筆』の時代に人が感じていたのはきっと、ものの記録や複製がこれほど容易にできてしまうことへの、素直な驚きや悦びだったでしょう。その感覚は、僕が写真を撮るときの、光をつかまえることへの素朴な悦びと近しいんじゃないかと想像するんです。今僕が写真を撮る理由はその逆で、デジタルのものが溢れる中にデジタルの視線から質量を探し続けるデジタル自然の鉛筆を探しているんです」
写っているものの意味や形態はどうでもいい。それよりも、光と向き合う愉しみに浸り切ることを意図した写真。言ってみればどこまでもピュアな写真を、これでもかというほど浴びる体験を、会場で味わってみよう。