ユニットコント――。

 それはお笑い好きのテレビっ子にとって甘美な言葉だ。もちろん、多くのお笑い芸人にとってもそうだろう。複数のコンビがユニットとなり行うコントのことだ。『オレたちひょうきん族』の成功をきっかけに、八〇年代末頃からフジテレビはその時代ごとに有望な若手芸人たちを集めたユニットコント番組を深夜に立ち上げていった。ダウンタウンとウッチャンナンチャンらの『夢で逢えたら』、ナインティナインや極楽とんぼ、よゐこらの『めちゃ×2イケてるッ!』の前身『とぶくすり』、キングコング、ロバート、ドランクドラゴンらの『はねるのトびら』、ピース、ハライチ、平成ノブシコブシらの『ピカルの定理』などだ。深夜で人気と経験を積み上げ、ゴールデンに昇格しスターになっていくという流れができていた。だが、コント番組がNHK以外ではほとんどつくられなくなってしまった現在、その系譜はほぼ途絶えてしまっている。

 そんな中、テレビ東京で放送されたのが『日本一やさしいコント。~やさしいズとくやしいズ~』だ。これは『にちようチャップリン』で一年ぶっ通しで行われていた「お笑い王決定戦」で優勝したやさしいズへの“ご褒美”番組。なんでも好きなことをやっていいと言われたやさしいズが選んだのが、同世代の有望株であるジェラードンとネルソンズと組んだユニットコント番組だったのだ。このような賞レースの優勝特典の番組は昨今いくつかあるが、大抵は“保険”のため知名度も実力も確かな先輩芸人をサポートで入れる場合が多い。それを一切しなかったのは英断だ。

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『日本一やさしいコント。~やさしいズとくやしいズ~』(テレビ東京系 1月7日放送より)

 まずは、主役であるやさしいズ単独のコントから始まり、次がいよいよユニットでのコント。ネルソンズやジェラードンの持ちネタに別の二組も参加するという形式で行われていく。これにはしっかりとしたネタのベースがあるから安心して各々がどんどんアドリブでボケていく。そしていよいよ完全新作のユニットコントへ。ドラマ撮影現場に急遽四人のヤンキー役がキャスティングされたという設定。その四人には各組のボケ担当であるタイ、和田まんじゅう、かみちぃ、西本武徳が扮しドタバタのボケ合戦をしていく。一斗缶に突っ込み、粉まみれになりながらボケ合う光景はひたすら楽しそうだった。

「つくってる段階でこれがテレビでできるんだっていう。ワクワクした」と和田が振り返ると西本が「俺らが十八歳の頃抱いていた夢そのものだったよね」と感慨深げに言った。すると言い方からか、妙な間(ま)ができ「ん?」という空気になってしまったけれど、きっとその思いは同じだったはずだ。一回切りの優勝特典で終わらせずに「夢」の続きを見てみたい座組だった。

『日本一やさしいコント。~やさしいズとくやしいズ~』
テレビ東京系  1/7放送
https://www.tv-tokyo.co.jp/broad_tvtokyo/program/detail/201901/23679_201901072412.html