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プーチンは「南クリル」、安倍首相は「四島」と

ウラジーミル・プーチン ロシア大統領
「南クリルの島々での共同経済活動について話し合いました。これは海産物の養殖、風力発電、ゴミの減量、温室野菜栽培の開発などです」

産経ニュース 1月23日

プーチン大統領 ©JMPA

 共同記者発表での言葉。安倍首相の目の前で、プーチン氏ははっきりと「南クリルの島々」と発言した。逆に、安倍首相はプーチン氏の前でロシア側が嫌う「北方領土」という言葉を使わず、「四島」とのみ表現した。

 ロイターは共同記者発表を報じる記事で、プーチン氏が日本との領土問題のいかなる解決にもロシア国民の支持が必要になると指摘したと報じている(1月23日)。ロシアの世論調査では国民の大部分が北方領土の返還に反対しており、今回の日ロ首脳階段の前にはモスクワの日本大使館前で抗議活動が行われた。今後、北方領土問題の解決と日ロ平和条約締結に向けては、ロシア国民の気持ちを和らげるほどの経済協力が必要になるとプーチン氏は匂わせているのだろう。

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 日ロ関係専門家のジェームズ・ブラウン氏は「ロシアの指導者は、この論争を活発な状態に保ち日本への影響力を維持することが役に立つのを知っている」と指摘した(ウォール・ストリート・ジャーナル 1月23日)。

曖昧な言葉で締めくくられた会見

安倍晋三 首相
「相互に受け入れ可能な解決策を見いだすための共同作業を私とプーチン大統領のリーダーシップのもとで力強く進めていく」

産経ニュース 1月23日

 安倍首相は経済協力以外の具体的な「解決策」は示さないまま、とにかく「力強く進めていく」というアピールで共同会見を締めくくった。

 九州大学の岩下明裕教授(ロシア外交)は「安倍首相がいよいよ『地獄の1丁目』に立ったな、という印象です」と述べている(ハフポスト日本版 1月22日)。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は「繰り返されてきた領土返還を期待させる報道は、すべて『誤報』だったわけです」と断じた(THE PAGE 1月20日)。

 もはや北方領土問題の交渉について、日本側から発信される「前進」「進展」「力強く」という言葉は信じないほうがいいのかもしれない。