1月22日、25回目となる日ロ首脳会談がモスクワで行われた。北方領土問題の解決に意欲を示してきた安倍晋三首相は「前進」「進展」と発言したが、ロシア側の強硬な態度が露見しつつある。日本側、ロシア側の発言を整理してみたい。
安倍晋三 首相
「戦後70年以上残された課題の解決は容易ではない」
産経ニュース 1月23日
安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領との会談は約3時間行われた。このうち約50分間は安倍首相とプーチン氏が通訳を交えて一対一で議論をしたという。
しかし、北方領土問題についての進展はまったくなかったと言っていい。会談後に行われた記者発表での安倍首相の発言には「前進」「進展」などの威勢の良い言葉がちりばめられていたものの、昨年11月の「戦後70年以上残されてきた課題を次の世代に先送りすることなく、私とプーチン大統領の手で必ずや終止符を打つ」(日本経済新聞 2018年11月14日)という発言に比べるとトーンダウンは明らかだ。
あたかも「現実的な」解決策として報じられた二島返還
話は少しさかのぼる。安倍首相は北方領土問題に関し、北方四島のうち、色丹島と歯舞群島の引き渡しをロシアとの間で確約できれば、日ロ平和条約を締結する方向だと複数の政府関係者が明らかにしていた。北方四島の総面積の93%を占める択捉島と国後島の返還、また引き渡しについて安倍政権幹部は「現実的とは言えない」と述べたという(共同通信 1月21日)。
日本政府の基本方針は「北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する」というものだが、「2島決着」は安倍首相の本心であり、安倍政権のはっきりした方針だろう。これまでにも「首相の本音は二島返還で十分というもの」という官邸関係者の声が報じられた(『週刊文春』2018年9月27日号)。政府関係者の声として「2島は確実に取り戻す、ということだ」「択捉、国後にも人が住んでいる。返すわけがない」という発言が報じられたこともある(時事通信 2018年11月15日)。
あたかも二島返還が「現実的な」解決策として進んでいるように報じられてきた。ところが、二島返還は現実的な決着でも何でもなかった。ロシア側はそんなことはまったく考えていないことがわかったのだ。