プロ野球12球団はまもなく、キャンプインを迎える。各球団の新戦力がお披露目され、2019年シーズンのチームカラーが見えてくるだろう。

 阪神は、西、ガルシアという実績十分の先発投手に加えて、大砲候補のマルテ、中継ぎ右腕のジョンソンを獲得。ドラフトでは社会人の選手を3人指名するなど即戦力の補強に成功した。就任1年目の矢野監督は、この戦力を用いてどんなチームを作り上げるのか? どんな戦いを見せてくれるのか? キャンプイン前に分析してみたいと思う。

「自主性」を重んじる矢野監督

「なんや。もう練習終わりか……。こんなんで大丈夫なんか?」。昨年の秋季安芸キャンプの出来事だ。メイングラウンドの観客席で全体練習を見ながら紙面のネタを探していると、斜め前に座っていた男性ファンが、あきれたような声でそう言った。時計の針は15時を指していた。

ADVERTISEMENT

 監督就任から1ヵ月も経たない間に始まった秋季キャンプ。未決定事項が多い中でも早速、大きな変化が2つ感じ取れた。まずは格段に明るくなった雰囲気だ。

 指揮官が掲げる「ファンを喜ばせる」「喜怒哀楽を出す」というテーマのもと、選手の感情がよく“見える”ようになった。秋季キャンプを見に行った人は感じただろうし、報道を通じて感じている人もいるだろう。

 象徴的だったのはキャッチボール前に組まれる円陣だ。選手が日替わりでスピーチをする。ただのスピーチではなく「すべらない話」を求められる。ウケる人もいれば、スベる人もいる。どちらにしても笑いが起き、皆、笑顔でキャッチボールに向かっていった。

「ファンを喜ばせる」「喜怒哀楽を出す」というテーマを掲げる矢野監督

 もう1つは「自主性」だ。全体練習が終わるのは15時前後で、遅い日でも16時になることはなかった。以降は個人の時間。大半の選手は室内練習場に入り、それぞれの課題と向き合っていた。ひたすら捕球練習を繰り返す捕手。クビをひねりながらもスイングを繰り返す野手。そこに指導者の姿はない。自分で考え、自分で悩み、自分で答えを探す。

 これまでとは明らかに違う方針だ。薄暗くなるまで指導者の前でロングティーをしていた昨年に比べれば、物足りなく感じる人もいるだろう。冒頭の男性ファンのように。何を感じ、どう評するかは人によって違うし、何が正解かというのは、シーズンの順位が決めることだ。ただ1つ断言できるのは、「根本から変えようとしている」ということ。