「不正統計」の問題が噴出している。厚生労働省が「毎月勤労統計」を不適切な方法で調査していたことが明らかになった。昨年の実質賃金の前年同月比の伸び率が大半でマイナスだった可能性があることも判明し、安倍政権の看板政策である「アベノミクス」にも打撃を与えている。関連する発言を追ってみた。

安倍首相 ©文藝春秋

根本匠 厚生労働相
「政府統計への信頼を失い、申し訳ない」

産経ニュース 1月24日

 何が起こっているのか、もう一度整理してみたい。

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 厚生労働省の「毎月勤労統計」調査で、従業員500人以上の事業所について全数調査すべきところ、2004年から東京都分について約3分の1の抽出調査にしていたことが明らかになった。04年から17年までは抽出した数値を全数に近づける復元処理をしていなかったため、給料が高い東京都の大企業の比率が本来より小さくなり、平均賃金などが低くなっていた。

「毎月勤労統計」が給付水準に連動する雇用保険や労災保険などで、約600億円の支払い不足が発生、延べ約2000万人に影響が出ている(時事ドットコムニュース 1月24日)。このことにより、政府は2019年度予算案の閣議決定のやり直しを迫られることになった。

当初は再調査は「必要があれば行う」

 衆院厚生労働委員会は1月24日、毎月勤労統計の不正調査問題についての閉会中審査を開いた。冒頭で根本厚労相は陳謝したが、その後の答弁はしどろもどろ。審議は再三ストップした。

 1月22日に発表された特別監察委員会による中間報告では、延べ69人からヒアリングしたことになっていたが、閉会中審査での質疑によって実数は37人だったことが判明。しかも、身内である厚労省職員がヒアリングを行っていたことが明らかになり、与野党から「身内によるお手盛り調査」と批判を集めた。職員の電子メールなどは調査せず、大臣ら政務3役からはヒアリングをしていない。報告書そのものについても、厚労省の事務方が深く関与していた。監察委員調査の中立性は完全に失われたことになる。

 閉会中審査で根本氏は再調査について「必要があれば行う」と述べるにとどめていたが、与野党からの批判を受けて、中間報告からわずか3日後の25日に再調査が決定された。