12月8日、単純労働を含む外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理・難民認定法(改正入管法)が成立した。未明まで与野党が揉み合った末の強行採決だった。どのような経緯で成立したのか、関係者の発言を追ってみた。

安倍晋三 首相
「全国的な深刻な人手不足の中、即戦力となる優秀な外国人材にもっと日本で活躍してもらうために必要だ」

産経ニュース 12月10日

安倍晋三首相 ©時事通信社

 あらためて、今回の改正入管法について整理してみよう。政府はこれまで原則として就労目的の在留を認めておらず、高度な専門人材に限って受け入れてきた。単純労働を含む外国人労働者の在留を認める今回の入管法改正は大転換となる。

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受入人数も、受け入れ分野も決まっていない

 改正入管法は、新たな在留資格「特定技能」を2段階で設ける。「特定技能1号」は特定の分野で「相当程度の知識または経験を要する技能」を持つ外国人に与えられる。在留期間は最長で通算5年、家族の同伴は認めない。「特定技能2号」は「1号」を上回る「熟練した技能」を持つと認められた外国人に与えられる。在留期間に上限はなく、家族の同伴も認められる。

 新たに日本にやってくる外国人労働者の数は数十万人とされているが、まだ決まっていない。受け入れは人手不足が深刻化している分野に限定されるが、どの分野かはまだ決まっていない。また、1号も2号もどのように技能を判定するかは未定である。あらゆることが「生煮え」のまま法案は成立し、今から4か月の来年4月から施行される。

審議時間はわずか38時間

山下貴司 法相
「衆参両院での熱心な議論でさまざまなご意見をいただき、感謝申し上げる」

産経ニュース 12月8日

改正出入国管理法が参院本会議で可決、成立し、一礼する山下貴司法相 ©時事通信社

 参院での成立を受けて山下貴司法相は記者団に対し、「熱心な議論でさまざまなご意見をいただき、感謝申し上げる」と語った。

 とはいえ、改正入管法に関する審議時間の短さは特筆に値する。衆参両院の法務委員会での審議時間は合計38時間にとどまった。特定秘密保護法案の63時間、安全保障関連法案の202時間、改正組織犯罪処罰法案の55時間に比べると明らかに短い。11月29日の参院法務委員会では、自民党の長谷川岳氏と公明党の伊藤孝江氏が質問を途中で切り上げ、合計57分ほど質問時間を余らせた(朝日新聞デジタル 11月29日)。とても「熱心な議論」には見えない。