深刻な人手不足に対応する外国人労働者の受け入れ拡大に向け、新たな在留資格を創設する出入国管理・難民認定法(入管法)改正案。政府は今国会での成立、来年4月の新制度開始を目指しているが、野党は反発を強めている。前週に続き、入管法改正案についての発言を追ってみた。

安倍晋三 首相
「日本での永住が認められるには『素行が善良』『独立の生計を営める技能』など、厳しい条件がある」

毎日新聞web版 11月5日

安倍晋三 首相 ©時事通信社

 多くの外国人労働者を受け入れる入管法改正案について、安倍首相は一貫して「移民政策ではない」と繰り返してきた。

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 5日の参院予算委員会でも、立憲民主党の蓮舫参院幹事長の質問に対して「移民政策導入ではない」と強調。在留資格を更新できる「特定技能2号」について「厳しい条件がある」ことから、同資格の取得がただちに永住にはつながらないという見方を示した。

「そうすると私も移民になってしまうわけですよね」

安倍晋三 首相
「私もかつて
1年ちょっと駐在したことがありますが、そうすると私も移民になってしまうわけですよね」
テレ朝news 11月5日

 これも5日の参院予算委員会での発言。蓮舫氏から移民の定義について「国連の広報によると、3カ月から12カ月の移動を短期的、1年以上にわたる居住国の変更を長期的、恒久移民と呼んで区別するのが一般的と説明」と問われた安倍首相は、自身も1年以上海外に滞在した経験を挙げつつ「海外に出ている駐在員は全員当てはまっちゃうじゃないですか。ですからそれは違うんですね」と退けた。

 しかし、だからといって自民党が掲げる「入国の時点でいわゆる永住権を有する者であり、就労目的の在留資格による受入れは『移民』には当たらない」という移民の定義が普遍性を持つわけではない(自民党オフィシャルサイト 2016年5月24日)。やはり、安倍政権はどうしても外国人労働者を移民と認めたくないようだという印象が残る。

 こうした政府の姿勢への批判は多い。国際政治学者の六辻彰司氏は「今回の決定の最大の問題は事実上移民の受け入れに舵を切ったことではなく、『労働力の受け入れであり移民政策ではない』とタテマエで実態を覆い隠そうとする政府の姿勢そのものにある」と強く批判(Yahoo! ニュース個人 11月4日)。

 国際政治学者の三浦瑠麗氏も「政府与党が『移民』という言葉を使わず、移民政策ではないという建前を強調しているのは、やはりごまかしというべきだろう」と批判。「移民と外国人労働者の違いをことさらに強調するのは、各国が経験してきた移民政策の教訓に背を向ける姿勢だと言わざるを得ない」と指摘している(FNN PRIME 11月8日)。