就職せずに「東大新聞専門の広告代理店」を創業
こうして、江副さんは月々莫大なアルバイト収入を得るようになり、就職するのがバカバカしくなったのか、1960年3月、そのまま東大新聞専門の広告代理店を作って独立を果たします。今でこそ起業は珍しくもありませんが、当時にしてみれば大変な決断でした。東大での成績は良くなかったようですが、それでも東京大学を出ればそれなりの人生が約束されている。それを投げうって……まあ、ビル・ゲイツだって、ハーバードを中退して一大IT企業を築いたわけですから、江副さんも情報産業の分野でそれをやってのけたということなんでしょう。
広告取りに始まった江副さんが次に始めたのが『就職情報』の発刊でした。学生はいちいち就職課に行って求人情報を見なければいけなかったのを、雑誌にまとめて掲載するようにしたわけです。
住宅情報や旅行情報へ手を広げていく非凡さ
ここで江副さんが非凡だったのは、自分の会社は単に学生に就職情報を提供するにとどまらず、情報を扱っているのだと気づいたことです。自分の仕事は情報産業である──。そうなれば、扱うものも就職情報にとどまらない。マイホームを持ちたい人たちに向けて『住宅情報』を、海外旅行をしてみたい人には『AB-ROAD』を創刊して、不動産業者や旅行会社を一軒一軒回る不便さを一気に解消したのです。
こうして、今では「えっ、これもリクルートだったの?」というほど多くの情報誌を出すようになったのですが、考えてみれば、これらの情報は、本質的にみな広告なんですね。従来はタダで消費者に届けていた広告が、それを集めて雑誌にすれば有料で売れる──このうまい仕組みを見つけた江副さんは、まさにタダ者ではなかったというしかありません。
(構成=浦谷隆平)
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“戦後”に挑んだ10人の日本人
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2月8日(金)18:30開場/19:00授業開始
場所:文藝春秋西館地下ホール
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