「打ち上げ地獄」の実態とは?
――打ち上げ? 10日間興行の最終日の打ち上げですか。
松之丞 あの〜、毎日あるんです。
――毎日?
松之丞 40日か50日、トリを取った後にお祝いをしてくださる方々と、夜の街に繰り出すわけです。打ち上げ嫌いの僕が(笑)。
――打ち上げ嫌い、有名ですもんね。
松之丞 打ち上げの差配なんかは、優秀な番頭(披露興行で金銭勘定、打ち上げの段取りなどを手配する前座)にお願いするつもりですが、まさか祝っていただいている僕が「じゃっ、これで」と帰るわけにはいかない(笑)。その結果、朝の4時とか、5時までかかる「打ち上げ地獄」が続くんですよ。まさに負のルーティーン(笑)。あと、昇進に向けてダイエットもしたいな。
――いま、体重はどれくらいですか。
松之丞 91.6キロです。来年の2月までに80キロにまで落としたいですね。大河ドラマ『いだてん』の中村勘九郎並みに絞れたらいいなあ。年末は、大きなストレスを小さな快楽で発散させていたんです。今年は小さな快楽を追求しないことにします。体が絞れた方が講談の内容も良くなるでしょうから。体の管理は自分の仕事なのできっちりやるとして、真打になることの不安がいくつかあって、そのなかでも物販が制限されるのが悩みの種なんですよ。
――松之丞さんは開演前、開演後にご自身の著書にサインを入れながら、ファンの方とコミュニケーションを取ってらっしゃいますね。
松之丞 まさか、真打が開演前にのこのこロビーに出ていって、「サイン本、いかがでしょうか」とか売り口上するわけにはいかないと思うんですよ、さすがに(笑)。真打は高座に出てくるワクワク感が大切だと思うので。そうなると、終演後に限られ、しかも帰るための新幹線の時間が気になってしまうでしょうね。
――なんだか真打に昇進するとなると、いろいろなことが不自由になるんですね。
松之丞 いまの僕の不安は、打ち上げと体重と物販です。ただし、このタイミングで真打になれて良かったなと思っていることがひとつあります。
――なんですか。
松之丞 実は頭髪の方がかなり薄くなってきてまして、完全にハゲる前に抜擢されて良かったです(笑)。
(#2に続く)
写真=榎本麻美/文藝春秋