麻生太郎副総理兼財務相の「子どもを産まなかった方が問題なんだから」という失言が物議を醸している。「人権感覚がまったくない」という批判が多いが、一方で「発言の切り取りだ」と擁護する声もある。麻生氏の本意は何なんだろうか? 過去の発言などからたどってみた。
「発言の一部だけが報道され」たと主張
麻生太郎 副総理兼財務相
「いかにも年寄りが悪いという変な野郎がいっぱいいるけど、間違っていますよ。子どもを産まなかった方が問題なんだから」
BuzzFeed News 2月4日
2月3日、麻生太郎副総理兼財務相が福岡県内で開かれた国政報告会で少子高齢化問題について語る中で、「子どもを産まなかった方が問題なんだから」と発言した。
子どもを産まない選択をした人々、あるいは子どもを産みたくても産めない事情を持つ人々のことを「問題」だと批判する内容で、著しく配慮に欠けた失言だ。信濃毎日新聞の社説は「少子化の責任は女性にある、と言いたいかのようだ」「産まないことを『問題』だと批判するのは人権侵害につながる。発言に弁護の余地はない」と麻生氏を厳しく批判した(信毎ウェブ 2月9日)。
麻生氏は、4日に開かれた衆議院の予算委員会で「誤解を与えたとすれば撤回させてもらう」と発言したが、発言の際はニヤニヤ笑っていたところを立憲民主党の大串博志氏に注意されるなど、「撤回」するつもりなどないことは明らか。そもそも何をもって「撤回」とするのだろう?
麻生氏は「発言の一部だけが報道されて本来の発言の趣旨が伝えられずに誤解を与えるようになったのだと思う。発言は気をつけたい」とも話し、遠まわしにメディアによる発言の「切り取り」を批判した。
公開された音声ファイルを聞いてみると……
西日本新聞が全文を音声ファイルとともに公開しているが(2月7日)、発言の大まかな内容は、全世代型の社会保障制度への改革を行っていくために消費税増税への理解を求めるというものだった。だからといって「子どもを産まなかった方が問題」という発言が肯定されることはない。
5日の会見では「産める、産めないの話ではなく、産まなくなっちゃった事実があるという話をしただけ」と釈明したが(テレ朝news 2月5日)、それなら「問題」という表現を使うのはおかしい。
麻生氏は5年前にもまったく同じことを言って批判を浴びている。それが次の発言だ。