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公共事業へのバラマキ政策との違い

――財政規律ではなく積極的な公共投資という方針は、自民党の、とくに地方の公共事業へのバラマキ政策と何が違うのでしょうか。それこそオリンピックやカジノ誘致は自民党版ニューディール政策と見ることもできます。

松尾 ここが肝心なところですが、社会保障、医療、介護、保育、教育、防災への大胆な財政出動という方針を、薔薇マークの認定基準にしています。箱モノ行政よりも、じつは人々の生活に直結する分野への直接的な投資こそが、景気の刺激策としては効果が高いのです。同僚の計算では、雇用者所得への経済波及効果は、介護への支出は公共事業への支出よりも24%高いです。これは今の雀の涙のような賃金で言える話なので、もっとまともな賃金になれば、もっと大きくなります。また、防災のための学校の建て替えとか、助成金で住宅のブロック塀を生垣に変えるとかすると、地元の業者が請け負って地域経済が活性化します。大型開発だともうけは都会の大手ゼネコンに溜め込まれてしまいますけど。

©末永裕樹/文藝春秋

現政権を選ばざるを得ないという現象の理由

――従来、野党も日本の左翼陣営も、アベノミクスにおける金融緩和を放漫財政として厳しく批判してきました。

松尾 財政規律、緊縮を訴えて、「国債をジャブジャブ発行しているからダメだ」といった形で政権批判をしても、自分の手を縛るだけです。こいつらは何もしてくれない、景気もよくならないと思われます。日銀が出した多額のお金は単に銀行に行っているだけで、世の中全体に回っていないという指摘は確かにその通りです。しかし現在のデフレ下で国債の発行を減らせば支出できないか増税するかで、どっちにせよ景気は悪くなります。いま金融緩和の手仕舞いをしたら、金利が上がり、円高になって輸出産業に打撃を与え、景気は一層悪くなるでしょう。ただでさえ企業が設備投資しない中で、もっと冷え込んでしまう。

 生活に直結する分野へ大胆にお金を出して雇用を創出するためにも、国債を発行して現在のようなゼロ金利でタダ同然で資金調達できる環境は、しばらく維持する必要があります。お金を出すこと自体が問題なのではないのです。ところが野党は、金融緩和と安倍政権の右傾化した政治のあり方をセットにして批判してきた。そうすると安倍政権の政治的スタンスやモリカケ問題をはじめとするスキャンダルに批判的な人も、経済政策への安心感・期待感から現政権を選ばざるを得ないという現象が起きるわけです。