安倍晋三首相は15日の臨時閣議で、消費税率を来年10月1日に現行の8%から10%へ予定通り引き上げる方針を表明した。社会保障制度を全世代型に転換する財源を確保するための増税だが、日本経済への影響は必至と見られる。消費税増税にまつわる発言をまとめてみた。

安倍晋三 首相
「あらゆる政策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう全力で対応する」

日本経済新聞電子版 10月15日

©JMPA

 安倍首相は15日の臨時閣議でこのように語り、「引き上げ前後の消費を平準化するための十分な支援策を講じる」と強調した。増税は消費の落ち込みを招き、景気が減速する可能性が高いが、対策に万全を期せば影響は限定的だと判断したようだ。

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 16日午前、安倍首相は記者団の取材に答え、「まさに万全を期す。先に引き上げた3%の際の経験を生かしていきたい」と語った(日経新聞電子版 10月16日)。

 消費税増税が行われるのは2014年4月に5%から8%に引き上げられて以来のこと。このときは駆け込み需要の反動減もあって個人消費が急激に冷え込み、結局、回復には3年もかかった。政府はこのときも消費税2%分にあたる5.5兆円もの経済対策をまとめて景気の冷え込みを避けようとしたが、対策の大半が企業向けや公共事業に充てられていた(NHK 解説アーカイブス 7月13日)。

対策の目玉に山口・公明代表「まったく公平ではない」

 今回、安倍首相が対策の目玉としたのは、クレジットカードなどキャッシュレス決済を対象に中小規模の店舗で買い物をした顧客に増税分2%をポイント還元するというもの。ポイント還元分は政府が補助を行う。一定期間の限定付きで設備導入は公費で補助をする方向だという。

©文藝春秋

 同時に、飲食料品などの消費税率を8%に据え置く軽減税率の導入、自動車や住宅の購入支援のための減税策も行うという。なお、外食(店内飲食)やケータリングなどは軽減税率の対象とならない。

 しかし、はたしてこのような対策が消費の冷え込みを回避するための「万全の対策」なのだろうか?

 2%のポイント還元について、公明党の山口那津男代表は「ポイント還元をしても利用しにくい人は確実にいる」と効果を疑問視し、社民党の福島瑞穂氏は「高齢者や子どもなど、クレジットカードを使わない人は還元を受けられない。まったく公平ではない」と批判している(朝日新聞デジタル 10月19日)。