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二転三転する消費税増税分の使途

安倍晋三 首相
「お年寄りも若者も安心できる全世代型の社会保障制度へと大きく転換し、同時に財政健全化も確実に進めていく」

時事ドットコムニュース 10月15日

 安倍首相の臨時閣議での発言より。「全世代型社会保障」は安倍政権の看板政策の一つである。しかし、昨年の衆院選での公約により、消費税増税分の使途が変更となったことが増税の意義をわかりにくくしているという声もある。

 消費税増税分の使途は、2012年に与党だった民主党と野党の自民、公明両党が合意した「社会保障と税の一体改革」で決定している。少子高齢化で膨らむ社会保障費に充て、将来世代の負担を軽くするため国の借金返済も着実に進めるとした。

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 しかし、安倍首相は昨年の衆院選で増税分の使途の変更を表明。幼児教育・保育の無償化を含む「全世代型社会保障制度」を訴えるようになった。もともと社会保障と借金返済が「1対4」だったのが、衆院選以降は政策経費と借金返済が「1対1」となった(東京新聞 10月16日)。

後期高齢者の医療費自己負担を1割から2割に

 政府は今月5日の未来投資会議と経済財政諮問会議で、「給付と負担」見直しの本格的な議論を、来夏以降に始める方針を示した。その直後に発表された財務省による社会保障の改革案は後期高齢者の医療費の自己負担を従来の1割から2割へ引き上げるなどの厳しい案が並んでいる(産経ニュース 10月9日)。

 消費税増税によって国の「財政健全化」は本当に確実に進むのか? 全世代型の社会保障制度は今後どうなるのか? 実はまだまったく見えていない。わかっているのは来年10月に消費税が10%になるということだけだ。