『学校の「当たり前」をやめた。 生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革』(工藤勇一 著)

 表紙に躍るセンセーショナルなタイトル。スマートなスーツ姿の著者――。私はてっきり、本書は先進的改革を行う民間人校長のサクセスストーリーかと先入観を持ってしまった。

 しかし、ある意味ではこれは「嬉しい誤解」だった。本書で紹介されるのは、学校の外部からの急進的な改革ではなく、内部から「学校の常識」を丁寧に問い直す改革だったのだ。

 著者は公立中学の教員出身。かつては生徒の半数が日比谷高校目指して越境してきたという名門千代田区立麹町中学校の現職校長である。しかも、東京都教育委員会をはじめ教育行政を経て課長職まで務めたという異色の経歴を持つ。果たして学校の「当たり前」をやめることができるのか? 私は前のめりに頁を繰った。

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 冒頭に掲げられた3つの改革は、「宿題なし」「クラス担任制は廃止」「中間・期末テストも廃止」。中学校の代名詞とも言えるこれらをなくすとは、一体なぜか?