蜷川さんは「厳しくて、口が悪くて、芝居に対するエネルギーが凄まじい」
――そのときすでに10年のキャリアはありましたね。
山口 じつは仕事を辞めようと思ったもう一つの要因として、もともと女優になりたくてこの仕事を始めたんですけど、気づいたら女優の仕事よりもバラエティの仕事のほうが多くなっていて。
――『いいとも』にも3年ほどレギュラー出演されていました。
山口 気づいたら、女優の仕事がゼロになっちゃってたんですよね。知り合いのテレビ局のディレクターの方に、何で私は仕事をもらえないんだろうって相談したら、「バラエティの色がつきすぎてるから使いづらいよね」ってはっきり言ってくださって。ああ、そうなんだって。このままこの世界にいても、私がやりたいことはやれないし、だったらもう意味がないなっていうのもあったんです。
でも、それって自分で蒔いた種というか、私に実力がなかったから、女優の仕事が来なくなっただけなんだということを、蜷川さんの舞台稽古で思い知るんですよ。私は女優をやってちゃいけないやって思って。そこから「いつ逃げだそうか」「公演中止にならないかな」っていうことばっかり考えてました。でも、それはやっぱり蜷川さんにはもちろんバレますよね。
――どれぐらい怖いんですか。
山口 いえ、怖くはないです。厳しくて、口が悪くて、芝居に対するエネルギーが凄まじいというだけで、理不尽なことは一切おっしゃらないし。私をなんとかものにしようとしてくださってるのも、愛情もすごく感じてました。蜷川さんが怖いというより、自分の無能さをこれ以上知りたくない、見たくないっていう、その恐れですよね。
――怒鳴られたりも。
山口 しょっちゅう怒鳴られてましたよ。「はなくそ」とか「コンビニ女優」とか。靴を投げられたこともありましたけど、きちんと当たらないように投げてるんですね(笑)。だから、ちょっとよけると他の人に当たっちゃったりして。慌てて「ごめん、ごめん、大丈夫か」みたいな。