枕元で携帯が青く光った夜
ある夜、眠りに就こうとしていたとき、枕元で携帯が震え、青く光った。
司からメールが届いたのだ。僕は心を躍らせながら、受信箱を開いた。まぎれもなく、司からのメールを受信していた。
『七崎! 俺、彼女ができたぜ!』
夜には眩しすぎる携帯の液晶を、目を凝らして見つめた。暗闇の中、嬉しい動悸は、ただの動悸へと変わっていた。
「どうしよう……どうしよう……」と頭の中で繰り返す声。でも、何をどうしようなのだろうか。どうしようもないことが起きたのだから、どうしようもないのだ。そう自分に言い聞かすが、その1秒後にはまた「どうしよう……どうしよう……」と考えているのだ。
まずは落ち着こう。どうしよう……。なんで僕はこんなに苦しくなっているのだろうか……。大切な友達が離れていってしまうのではないかという心配と不安で、こんなに苦しいのかもしれない……。司を渡したくない……。彼女といる時より、僕といる方が楽しければ、彼女と別れて僕の所へ戻ってきてくれるのではないだろうか……その為にはどうしよう……。友達として司のそばに居続けよう……。そして彼女と別れるのを待てばいい……早く別れればいい……いや、早く別れさせてやる。
僕は、動く絵文字を沢山つけて、まるで、司の幸せは僕の幸せだと言わんばかりの返信メールを送信した。
『彼女、おめでとう‼ 僕にも紹介してね。お幸せに‼』
(続き#7「呪われたデート」を読む)
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写真=平松市聖/文藝春秋