書籍「僕が夫に出会うまで」
2016年10月10日に、僕、七崎良輔は夫と結婚式を挙げた。
幼少期のイジメ、中学時代の初恋、高校時代の失恋と上京、
文春オンラインでは中学時代まで(#1〜#9)と、
自分がゲイであることを認めた瞬間から,
物語の続きは、ぜひ書籍でお楽しみください。
司が転校して来てくれたことで、僕の学校生活は一気に有意義なものとなっていた。クラスは違うが、この校舎のどこかに司が居ると思うだけで、心が躍りだす。今まで学校生活が苦痛だったはずなのに。
それに、僕と司の関係はそれだけではなかった。司が、僕が通う塾に入会したのだ。同じ校舎で学び、一緒に塾へ通う。こんな幸せがあるだろうか。そして、僕がもっとも幸せを感じていたのは、塾が終わった後の時間だ。
司と2人、暗くなった公園で、遅くまでおしゃべりをしたり、こそこそと隠れて缶酎ハイを飲んでみたりするのが、なんだか2人だけの秘密事のような気分がして嬉しかったのだ。僕の心臓の鼓動が早いのは、大人に隠れて缶酎ハイを飲んでいるからではなく、司と一緒にいるからだということを僕は知っている。大人がいう青春とはこのことなのだと思っていた。
司からの着信は1番好きな青色にした
ちょうどその頃、僕も司も携帯電話を持つ事になり、離れていても、いつでも連絡ができるようになった。初めて持つ携帯は司とおそろいで、当時、動く絵文字や、写メールが人気だった、J-PHONEの折りたたみ式携帯電話だ。
その携帯は、折りたたんだままでも、光の色で、誰から電話やメールがきたのかが、すぐにわかるように設定することができる。例えば、家族からの連絡は赤、友達関係からの連絡は緑に光る、というような設定だ。
僕は一番好きな青色を、司だけの色に設定した。だから携帯が青く光るたびに、僕の心臓は嬉しい動悸を引き起こすのだった。