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連載僕が夫に出会うまで

男友達に片思いした僕が、彼からのメールに絶望した話

僕が夫に出会うまで #6

2019/03/07

連載「僕が夫に出会うまで」

 

2016年10月10日に、僕、七崎良輔は夫と結婚式を挙げた。幼少期のイジメ、中学時代の初恋、高校時代の失恋と上京……僕が夫に出会うまで、何を考え、何を感じて生きてきたのかを綴るエッセイ。毎週連載。

 

(前回までのあらすじ)中学生になってはじめてできた、男友達の司。

 

「え! 七崎、まだ脇毛生えてないの?」

 

 司はそう言うと、「ほら」と2人きりの生徒会室でワイシャツを脱ぎ始めた。抑えがたい猛列な欲求が体中を駆け巡り、僕の初恋が始まった――。

 

(#1「とある夫夫(ふうふ)が日本で婚姻届を出したときの話」を読む)

幼少期編#2#3)を読む)

中学生編#4#5)を読む)

(前回の記事「ゲイの僕の初恋は『脇毛』から始まった」を読む)

 司が転校して来てくれたことで、僕の学校生活は一気に有意義なものとなっていた。クラスは違うが、この校舎のどこかに司が居ると思うだけで、心が躍りだす。今まで学校生活が苦痛だったはずなのに。

 

 それに、僕と司の関係はそれだけではなかった。司が、僕が通う塾に入会したのだ。同じ校舎で学び、一緒に塾へ通う。こんな幸せがあるだろうか。そして、僕がもっとも幸せを感じていたのは、塾が終わった後の時間だ。

 司と2人、暗くなった公園で、遅くまでおしゃべりをしたり、こそこそと隠れて缶酎ハイを飲んでみたりするのが、なんだか2人だけの秘密事のような気分がして嬉しかったのだ。僕の心臓の鼓動が早いのは、大人に隠れて缶酎ハイを飲んでいるからではなく、司と一緒にいるからだということを僕は知っている。大人がいう青春とはこのことなのだと思っていた。

司からの着信は1番好きな青色にした

 ちょうどその頃、僕も司も携帯電話を持つ事になり、離れていても、いつでも連絡ができるようになった。初めて持つ携帯は司とおそろいで、当時、動く絵文字や、写メールが人気だった、J-PHONEの折りたたみ式携帯電話だ。

 その携帯は、折りたたんだままでも、光の色で、誰から電話やメールがきたのかが、すぐにわかるように設定することができる。例えば、家族からの連絡は赤、友達関係からの連絡は緑に光る、というような設定だ。

 僕は一番好きな青色を、司だけの色に設定した。だから携帯が青く光るたびに、僕の心臓は嬉しい動悸を引き起こすのだった。