昨年(2018年)、ゲームに関して世界的に大きな出来事が2つおこった。WHO(世界保健機関)による「ゲーム障害(gaming disorder)」のICD-11(国際疾病分類 第11版)への追加と、世界各国でのルートボックス(loot box:日本の「ガチャ」とほぼ類似の仕組み)への批判である。
日本のゲーム系メディアでも、両者に関する数多くの記事が掲載された。最近では一般メディアにも記事が登場している。しかし、「ゲーム障害」という言葉からくるイメージが先行している感がぬぐえず、一般メディアの記事への、ゲーム産業関係者やゲーム好きからの批判も多い。ある意味、この記事も「ゲームが大好きな学者」からの反論記事の一つである。
いくつかある批判記事の中でも、任天堂の「スプラトゥーン2」(2017年)をとりあげた「「スプラトゥーン」の中毒性が極端に高い理由」には数多くの反論があった(この記事へのゲーム系メディアから反論記事としては、「ビデオゲームへの偏見とそれへの批判:東洋経済オンライン『スプラトゥーン』の「中毒性」ついて」が詳しい)。
最初に筆者(小山)の「スプラトゥーン」シリーズへの個人的な評価を書いておくと、「FPS/TPS対戦を、このほほえましさでソフトランディングさせたのはすごい」というものである。大傑作と言って良い。
3次元空間の中で闘う「戦争ごっこ」
「スプラトゥーン」シリーズはゲームジャンルとしてはTPS(Third Person Shooter)にあたる。
米国や欧州ではFPSやTPSが定番ジャンルの一つである。これは、「お互いに銃を持ち、障害物に隠れたりしながら3次元空間の中で闘うゲーム」で、端的に言ってしまえば「戦争ごっこ」である。
FPSやTPSはネット経由でチーム対チームで対戦できるものが多い。味方チーム内は音声チャットでプレイ中も会話できるが、熱くなって味方に対して「なんで失敗したんだ!」と乱暴な発言が出る人もいる。もっと言えば、負けたチームが海外の場合、ここでは書けないような民族ヘイトの発言まで出ることも珍しくない。こういったいかにもマッチョな雰囲気もあって、FPSやTPSは日本ではごく一部のマニアにしか遊ばれていなかった。
※ゲームに明るくない人向けに解説しておくと、TPSは3次元空間の中で様々な障害物に隠れたりしながら、銃で敵と闘うタイプのゲームの総称である。自分の操作キャラクターの背中が見えている(第三者視点)の場合TPSと呼び、操作キャラクターの視点(主観視点)の場合FPS(First Person Shooter)と呼ぶ。海外で人気のジャンルで、現在ではeSportsの競技タイトルとなるゲームも多い。