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 任天堂は「スプラトゥーン」を「イカ同士がインクを撃ち合って陣取りをする」かわいい&ポップなゲームにすることで、幅広い層に受け入れられるようにした。「マリオ」を中心に良質な子供・家族向けを販売する任天堂の面目躍如である。スプラトゥーンのファン層は女性にも広まっており、筆者の研究室でも女子学生がPCの壁紙をスプラトゥーンにしていた。

「スプラトゥーン」シリーズが傑作であり、既存のマニア層以外の多くの人を引き付けたからこそ、批判記事も生まれたともいえる。しかし、これを「有名税」としてそのままにしておくのは、ゲーム産業やゲーム消費文化に悪影響を与えかねない。

 この記事では、既存のゲーム批判への反論記事よりもう少し原理原則の話をしてみたい。

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1)ハマらないようなものはそもそも娯楽じゃない

 あなたの知り合いに、「勝負事になると熱くなりすぎるのでちょっと面倒」な人はいないだろうか? もしくは、「贔屓のプロ野球チーム(Jリーグチームも可)が負けた翌日は機嫌が悪い」人は? そういった人がいるからと言って、「野球(サッカー)が悪い」とまで思う人はほとんどいないはずだ。普通に、その人が難ありなのである。ゲームも同じではないか。

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 そもそも論として、ゲームに限らず、小説でもマンガでも、もっと言えばスポーツ観戦でも、「熱中する」「ハマる」という感覚が全くないものは娯楽では無い。そして、「ハマる」のは大人も子供も同じである。そして、ハマると熱くなる。「スプラトゥーン2」にハマる人がいたとして、それはゲームのせいと短絡的に考えるのは疑問が多い。

 子供は欲望のコントロールに関するトレーニングがまだ不十分であるため、熱中しすぎる問題はある。それこそ筆者が子供のころからずっとある問題だが、任天堂は「みまもりSWITCH」というペアレンタルコントロール機能をちゃんと搭載している。よって、これについて任天堂を批判するのも筋違いだろう。

 批判記事ではスプラトゥーン2の対戦に負けてキレる大人を紹介しつつ、ゲーム依存症についての議論を展開していたが、このようにすぐキレる大人は、スプラトゥーン2でなく、囲碁や将棋で負けたときでもキレるような人ではないだろうか? そして、囲碁や将棋の対局で負けたときにキレた大人を見て、囲碁や将棋が悪いという人はいるだろうか?

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 ゲームはメディアから頻繁に悪玉にされるが、国民全体の半数以上が遊んでいる(平成28年国民生活基礎調査)国民的娯楽である。それだけ多くの人が遊んでいる以上、決して異常な娯楽ではないことは理解していただきたい。また、それだけの人数がいるのだから、ゲームでの勝ち負けにすぐ熱くなる人を見かけてもおかしくない、ということも理解していただきたい。