ゲームの寿命を延ばすためのログインボーナス
また、批判記事ではスプラトゥーン2ではプレイヤーのランクを上げるには実際にプレイすることが必要で、ログインボーナスや1日1回限りのガチャ的要素があり、常にゲームに縛り付けられることが批判されていた。しかし、これはむしろ任天堂のゲームの主対象が子供であり、任天堂が子供のプレイヤーに不利にならないよう配慮した結果と言える。
子供はお小遣いが限られており、課金アイテムを買うのは容易ではない。また、次のゲームを買ってもらえるのは翌年の誕生日やクリスマスまで無い、ということも十分あり得る。その代わり、時間的な余裕は大人より多い。子供たちが公平感を持って遊べるように、課金アイテムによるブーストが出来なくなっている。また、ログインボーナスや1日1回限りの要素があるのは、子供たちがすぐに飽きてしまわないようにし、ゲームの寿命を延ばすためである。すぐに飽きてしまうようなものを、親が買ってくれるはずがない。
従来のゲームでバンバン課金するような、いわゆる「ガチ勢」の大人から見たらじれったい「悪魔のようなシステム」も、子供の視点では優しいシステムなのである。主たるマーケティング対象でない人が商品の在り方に苦情を言っても、当事者からみたら「そんなことを言われても困る」となるだろう。
3)「取り返しがつかないダメージが出る」こと以外は自己責任でいいのでは?
ここまでの議論をまとめると、次のようになる。
・「スプラトゥーン」シリーズは老若男女遊べる優れたゲームである
・子供のプレイヤーに配慮されており、ゲーム内で課金する要素はない
・ネットワーク接続と各種サービス(対戦、ログインボーナスなど)は飽きるまでの時間を延ばし、製品寿命を延ばすための工夫である
また筆者の主張を1行で書くと、「娯楽がハマるのは当たり前。分別ある大人なら自己責任でやるべし」となる。
とはいえ、筆者自身はなんでも自己責任と考えているわけではない。ゲームの課金ガチャに関しては批判的な立場である。
過度に熱中しすぎる人が出るものには、何らかの形でその人の頭を冷却する仕組みが必要である。熱中する人が群がる株式市場の場合、個別の株価の変動幅には上限と下限(ストップ高とストップ安)が設定されている。また、通常の株価より思惑で大きく動く先物市場では、市場での取引そのものを停止するサーキットブレーカー制度も存在し、東日本大震災後には実際に取引を一時停止している。
「頭に血が上った状態で目の前に選択肢があると、取り返しがつかない選択をする可能性がある」ような場合は、何らかの制度的な仕組みがある方がいいだろう。
ただし、ここでいう「取り返しがつかない選択」はかなり慎重に判断する必要があるだろう。個人的には、「健康や生命にかかわること」と「高額な支出にかかわること」では、何らかの形でクールダウンさせる仕組みは必要だと考えるが、そういったケース以外では、「スプラトゥーン」のようなゲームは健全な娯楽になりうることはもっと知られたほうがいいと思っている。