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特集観る将棋、読む将棋

自分は「未知の世界」に行くのが好きなので

―― それは、プレーヤーとしてまたすぐにタイトルを取るという意志の表れでしょうか。

 佐藤 そうでしょうね。私も永世称号を持っていまして、ルール上は引退してから名乗るという制度になっていますけれども、過去にはある程度の年齢の方が現役中に名乗られることも多いです。ただ、羽生さんはまだまだ若いですからね。同じ棋士の心情としては、一番予想していたお答えでした。結果がすべてという世界に生きていますから。

 

―― 羽生さんとの対局という意味では、昨年12月に行われた順位戦での対局は、変則的な序盤から始まり、最後は日付を超えての大変な熱戦でした。

佐藤 自分の中では、あれで負けて名人挑戦が完全に消滅してしまったので、ちょっと残念な一局ではありましたね。これでもまだ名人を狙っていますから(笑)。はっきり負けの局面から、最終盤で一瞬こちらに「勝ってもおかしくない」というチャンスが発生していたので、ベストを尽くせれば違う結果になった可能性はありました。もう少しそういう際どいところの精度を高められれば、という思いはあります。ただ、自分はもともと「未知の世界」に行くのが好きなので、手探りの中で最後までギリギリの将棋で戦えたのは良かったです。そういう将棋を指したいので。「負けて良かった」と言うのもなかなか難しいんですけれども……。

 

気持ちだけは若々しいつもりです

―― 応援しているファンからは、佐藤会長、羽生さんをはじめとする40代の棋士が再びタイトル戦の舞台に上がる日を待ち望む声が聞こえてきます。

 佐藤 残念ながら、私は今年10月には50歳の誕生日を迎えるので、40代ではなくなっちゃうんですけど(笑)。

 もちろん羽生さんは順位戦で挑戦争いをしていますし、これから始まる棋戦で挑戦者になってもまったく不思議はないと思います。それでも、今までのように多くのチャンスがあるかといわれれば、羽生さんであっても大変なことは間違いありません。20代、30代の層が本当に厚いですから。藤井(聡太)さんに至ってはまだ16歳です。

 振り返ってみると、私は40代になってからタイトルを1回しか取っていませんが、正直もうちょっと実績を積み重ねられると思っていました。羽生さんはずっとタイトルを保持していましたし、森内(俊之)さんも竜王、名人になった。40代で実績を上げている棋士も周囲に少なくない中で、自分としてはふがいない結果だったと反省しています。

 ただ、気持ちだけは若々しいつもりですし、今後もタイトルを獲りたいと狙っていますよ。専務理事の森内さんからは、「役員なんだから、プレーヤーとしての目標を立ててはいけない」と苦言を呈されますが(笑)。