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特集観る将棋、読む将棋

将棋ブームで予想外だったのは「ひふみん」人気

―― 最近の将棋ブームはどうご覧になっていますか。

 佐藤 非常にありがたいことです。やはり藤井さんが29連勝したあたりから、急激にファンの関心も高まってきたかなと思います。でも、まさかここまで将棋を知らない人にまで広がるとは……。加藤一二三先生がテレビで引っ張りだこになるとは、正直想像がつきませんでした。

 藤井さんは、将棋が強いだけじゃなくて、言葉遣いも常人離れしていますよね。それが文化としての将棋を格調高くしています。近年の若手には、本当にしっかりした棋士が多い。将棋が強いだけじゃなくて、人間的に優秀な方が多いなと感心しています。昭和の時代は「密室のゲーム」と言われていたほどクローズドな世界でしたが、今はネット中継もあるので「見られている」という意識が強いのでしょうか。

 

―― 佐藤会長もネット中継をご覧になることはありますか。

 佐藤 なかなか時間が取れないですが、たまに中継を見ることはありますね。あとは新聞や雑誌など、将棋関係の記事にはなるべく目を通したいなとは思っています。

―― ブームの一端を担っているように、将棋とネット中継はかなり親和性が高いように見受けられます。

 佐藤 「将棋を指す」という意味でも、もともとインターネットとの相性は良かったですね。世界中どこにいても、誰とでも指せるような環境ができたことは、将棋が強くなるためには非常に大きな変化でした。それが少し前から当たり前になって、いまは対局などのデータ分析も進化してきました。アマチュアの方も強くなれる環境が整ってきています。

 そういう意味でも、私たちの修業時代とは劇的に変わりましたね。当時は、「情報収集も勝負の一環」という空気がありましたから。情報収集のために将棋会館にきて、「この手は悪かった」と実際に見ないとわからなかった。いまはすべての情報がオープンになっています。

 

『聖の青春』は懐かしい

―― ブームの一面としては、小説、漫画、映画など、将棋がさまざまな創作のテーマになっています。特に印象に残った作品はありますか。

佐藤 『聖の青春』、『3月のライオン』、そして『泣き虫しょったんの奇跡』と3年連続で将棋の映画が公開されましたね。今までになかった現象です。私は村山聖さんとは同世代で実際に戦っていましたので、大崎善生さん原作の『聖の青春』は懐かしく、当時のことを思い返しながら見ました。棋士はみんなそうだと思いますけれども、人生をかけて盤面の勝負に臨んでいますので、そういう部分でファンの共感を得られたとすれば、棋士冥利に尽きると感謝しています。

佐藤康光(さとう・やすみつ) 
1969年、京都府出身。将棋棋士。日本将棋連盟会長・九段。タイトル通算十三期。永世棋聖の資格を有する。2011年より、日本将棋連盟棋士会長、2017年より現職を務める。同年、紫綬褒章受章。

写真=杉山秀樹/文藝春秋

※このインタビュー記事は、『オール讀物』2019年3月・4月合併号に掲載された「佐藤康光 日本将棋連盟会長 激動の将棋界を語る」に一部加筆修正したものです。なお、佐藤康光会長は『オール讀物』にて毎月「緻密流将棋日記」を連載中です。

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文藝春秋
2019年2月26日 発売

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