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2019/03/05

genre : ニュース, 国際

なぜ“いかにも”怪しい詐欺に騙されるのか?

 ニセ大学は、設定上では沿海部などの豊かな大都市にキャンパスが置かれていることが多いが、応募者の多くは農村出身者や、内陸部の貧しい地域の若者たちだ。だが、中国の大学は、日本でいうセンター試験とやや似た高考という公的な全国試験を受験しなければ基本的には入学できないシステムだ。ニセ大学が介入する余地はなさそうに思える。

「通常、中国の受験生は高考が終わった後にウェブサイト上で志望校を記入(填志願)して志望先の大学に出願する形式です。このときに書いた大学名は省の教育部門で審査されるはずなので、ニセ大学の名前を書くとバレるはず。通常の『填志願』を通じてニセ大学への入学手続きがおこなわれることはまずないと思います」

 日本生まれの華人2世が立ち上げたニュースメディアの『Chi2ese NEWS』に、中国の学生事情について記事を寄稿した在日華人の「ちゃんしゅー」さんもこう話す。ならば、被害者たちはなぜ騙されるのか。

「オフィシャルな『填志願』プロセスをすっ飛ばす形で、ニセ大学のホームページ上で入学手続きをおこなわせる例があるみたいです。応募者側は、高考の点数が振るわなかったにもかかわらず、(パッと名前を見た限りでは)有名大学っぽい大学に入学できるということで、騙されてしまうようですね」

ニセ大学の武漢経貿大学(上)と、本物の河北経貿大学(下)のウェブサイト。堂々とパクりすぎである

ターゲットは情報が不足している農村出身者

 ニセ大学は「特招(特別招待)」などの、いわば推薦入学やAO入試に近い形式を、カモに対して提案してくる例が多いようだ。カモを探すには農村部に張り紙を出すようなレトロな方法もあるが、QQ(チャットソフト)の受験生コミュニティから個人情報をぶっこ抜き、個別に営業をかけるような方法もある。

 そもそも、中国では大学の受験資格が地域別になっていて、一部の地方出身者は省外の名門大学に進学するハードルが非常に高い。加えて日本と同様に、田舎は都会と比べて大学受験の情報が圧倒的に不足しており、両親など周囲の人に大学進学者がいない例もあることから、特例的な入試形式を不自然に感じずに出願してしまう人もいるようなのだ。

 多くの場合、「合格」後に入学金や学費の名目で数万元(日本円で10万~50万円程度)を振り込み、その後は大学側から音沙汰なし……(もしくは「入学」前に記載の住所に行ってから騙されたことに気付く)というパターンをたどることになる。

 また、上記のような入学金・学費詐欺とは異なった、アメリカ的なディプロマミル商法もある。

 近年の中国の大学進学率は40%台に達したとはいえ、内陸部のローカルな社会では大学進学者が比較的少ない。ひとまずそれっぽい校名の大卒であるだけで、多少は社会的信用を得られるといった事情もあり、ニセ大学なのを承知の上で学位を目的にカネを支払う人もいるわけである。

なかには実在の大学がニセ大学と疑われる例も。2003年に現在の名称に改名した遼寧省の渤海大学は、ネット上でよく「ニセ大学か?」と疑われるが、れっきとした本物の大学である