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特集観る将棋、読む将棋

佐藤康光九段に聞く「将棋指しとメガネの深い関係」

「棋士にとって勝つために重要なアイテムですから」

2019/03/07

何事も困らないと変えようとは思わない

 

―― 対局中はかなり近い距離を凝視することになります。普段使いとは別に、近くが見やすいメガネを用意するといった使い分けはしていないんですね。

 佐藤 はい。たしか近くが見えにくいのが老眼の始まりでしたか……? とくにまだ困っていないのでメガネを変える予定はありません。

……今考えてみると、私のメガネ選びは、将棋のスタイルと同じかもしれません。必要に迫られないとスタイルを変えない。

 この1~2年AI(人工知能)の登場で将棋界はガラっと変化していますが、私は昔からずっと自分なりの戦い方をしてきました。でも20代後半の頃、羽生(善治)さんに連敗が続いていたときには、将棋のスタイルを変えたことがあったんです。基本的に、何事も困らないと変えようとは思わない。向上心が少ないのかもしれませんが(笑)、そういうタイプなのかもしれません。

 

―― 羽生さんといえば、以前かけているメガネが鯖江のメーカーのものからZoffへと変わったときに、メガネ業界や将棋ファンの間で話題となりました。昨年、Zoffは棋戦の協賛社にもなりましたね。

 佐藤 はい。それはたしか羽生さんとのご縁がきっかけだったと思います。じつはZoffさんを愛用している棋士は多くて、女流棋士にも何人かいたと思います。

メガネは勝負を左右する

―― メガネの企業が新たにスポンサーとなったり、棋士のかけているメガネが話題になったりなど、将棋への注目度の高まりを感じます。

 佐藤 身に着けるものであるとか、食べるものであるとか、近年そうした将棋以外のところで関心を持っていただいているのは、本当にありがたいなと思います。とくにメガネは、棋士にとって勝つために重要なアイテムでもありますから。

 

―― 対局の際にかけるメガネに、制約などはあるのでしょうか。たとえば極端に派手なものや、色の濃いカラーレンズが禁じられているとか。

 佐藤 とくにルール化はされていません。なかには、対局中にかけかえる方もいらっしゃいますね。たしか最近、広瀬(章人)さんとの対局のとき、彼は休憩後に違うメガネをかけていたような気がします。自分は無頓着ですが、メガネをいくつか持っているという人は多いはずです。

―― 佐藤さんを含め、コンタクトではなくメガネを選択する人が多いのは、対局中にズレてしまうなどのトラブルを避けるためなのでしょうか。

 佐藤 女流の方にはコンタクト使用者も多いかなとは思うんですが、たしかにメガネ派のほうが多いですね。自分は、基本的にメガネです。試しに1~2週間コンタクトを使ってみたこともありますが、目に物が入っている状態は、あまり得意ではないですね。やはり何かあった時のために、メガネのほうが良いかなと。