昨今の将棋人気でファンの裾野が広がるなか、対局以外の事柄についても注目されることが増えている。対局中の食事やおやつをはじめ、ファッションや趣味に至るまで……。そうした話題からは棋士の人柄が垣間見えることもあり、将棋のルールに詳しくなくとも興味深い。

 今回着目するのはメガネである。棋士にとっては、ときに勝負を左右することもある重要なアイテムだ。話を訊いたのは、日本将棋連盟会長も務める佐藤康光九段。じつはメガネにまつわるエピソードに事欠かない佐藤氏が語る、将棋とメガネの関係性とは?

 

 〈日本将棋連盟・佐藤康光会長インタビュー「AI全盛時代でも貫きたい、私のスタイル」〉も併せてお読みください。

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将棋盤がぼやけていた小学生将棋名人戦

―― メガネをかけるようになったのは、いつ頃からですか。

 佐藤 小学校高学年のときには、もうメガネをかけていました。でも、6年生で小学生将棋名人戦に出たときには、気恥ずかしくてメガネをかけなかったんです。ですから、将棋盤がぼやけて見えていた記憶があります。今も、かなり近視が強いです。

―― 棋士には若い頃からメガネを掛けている方が多い印象があります。

 佐藤 やはり気合をいれて盤面を見ますから、目を酷使して神経が疲れてしまうのでしょう。近いものをずっと見ているわけですから。といっても、私の場合は単にテレビを見過ぎていただけなんですけど(笑)。今では対局中に気分転換がてら外の景色を眺めたりもしますが、子どもの頃はひたすらに盤面を睨みますからね。さらに現在はテレビやネット中継など映像で将棋を見る機会も増えているので、なおさらメガネが必要になる人も多いんじゃないでしょうか。

 

メガネを買うときは、もう一つ同じものを

―― 現在かけていらっしゃるのはプラスチックフレームですね。クリアグレーのスクエア型が、落ち着いた印象です。こちらを選んだ理由は?

 佐藤 前のメガネが壊れたから……、だったかと思います。必要に迫られて、近所で買いました。将棋連盟会長の就任会見のときにはこれをかけていたので、2年は過ぎましたね。

 メガネを変えたことでイメージがガラっと変わらないよう、以前かけていたものと雰囲気の近いデザインを選んだつもりです。フレームと鼻パッドが一体になっているのも選んだ理由なんですが、特にこだわりがないので、そうしたメガネがあることもこれを買うまで知りませんでした。一応これは同じものをもう一つ買ってあります。

 

―― 対局の際は、つねにスペアを用意しているんですか。

 佐藤 必ず持っているわけではありません。ただ、また壊れたときにイメージが変わってしまわないほうがいいかなと思い、二つ買っておきました。勝負を左右するものでもあるので、現在使っているものが壊れたときに、違和感なく使えるものがあったほうが安心できますから。さらにもう一つ買っておこうと思ったときには、残念ながらもう同じデザインのものがすでにお店にありませんでした。