アジアの児童向け作品は「教育」よりも「遊び心」を重視する
その理由の一つに、日韓カルチャーの共通点を挙げる専門家もいる。前出のクロス教授によると、アジアの児童向け作品は「教育」や「伝統」よりも「子供たちにとっての遊び心やファンタジー」を重視する傾向にあるのだという。子供視点と言えるこの姿勢こそ、国際競争における日韓の強みであるようだ。
ヒットを下支えしたK-POP的要素
西洋の童謡をベースとするPinkfong版『Baby Shark』だが、その世界的ヒットはK-POPのグローバル・パワーを証明するものでもある。
『Baby Shark』は韓国でヒットした後、インドネシアやフィリピン、シンガポールなどでバイラルしたが、これらの地域では、BLACKPINKやRedVelvetやNCTなど、アジア圏で広い人気を誇るK-POPスターたちが同曲をカバーしていったことがヒットの導火線とされている。この影響を鑑みた経済誌Forbes は「東南アジアでビジネスを始めるのならK-POPスターを採用すべきだ」と提言した。
K-POP要素は『Baby Shark』の音楽面にも潜んでいる。Pinkfong社の親会社SmartStudyのジェイミー・オーは、Pinkfong社が曲作りで意識していることとしてトレンディなビートや陽気なリズム、フックのループ構成を挙げており、Pinkfongの楽曲群を「次世代のためのK-POP」と定義している。実際、アメリカでは、Billboardなどのメディアが『Baby Shark』を「K-POPビートの童謡」だと紹介している。ベースにした曲が西洋製でも、Pinkfong版は韓国テイストだときちんと判断されているのだ。
こうした受け入れられ方は、K-POPの音楽スタイルがアジア圏のみならずアメリカでも浸透しつつあることの証左ではなかろうか。『Baby Shark』の世界的成功は、コリアン・ポップカルチャーのパワー増大をまさしく象徴している。