「中国人は面子を重んじる」「中国人は面子をつぶされることを何より嫌う」「ゆえに、中国人の部下を注意するときは、みんなの見ていないところで注意しなくてはいけない」――。

 中国人の国民性を説明する際によく使われる言葉だが、ときには中国人相手でも、相手の面子を思い切りつぶす必要もあるのかもしれない。

費用は1人あたり5万~10万円

 私は2015年始めに中国・上海のホストクラブでホストとして働いていたのだが、ミーティングルームに張られていた張り紙を見て、そんなことを思わされた。

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試行錯誤しながら、ホストっぽいファッションに身を包んだ筆者

 ホストクラブで働くようになったのは、中国人富裕層の金遣いの荒さを間近で見てみたいと思ったのがきっかけで、詳しくは拙著『ルポ 中国「潜入バイト」日記』をお読みいただけるとありがたい。ホストとしての潜入期間は3カ月近くに及び、ときには目の前で大麻を吸いながら一晩で30万円を支払う女性客を見ることもあった。

 中国のホストクラブの内装は、ゴージャスなカラオケボックスという感じで、客は個室でホストとの談笑やカラオケなどを楽しむ。費用は大人数で行ったほうが安くなるが、それでも1人あたり5万~10万円程度はかかる。初回限定の割引料金などはなく、日本以上に富裕層向けの娯楽と言える。

ゴージャスな内装の店内

 ホストたちの年齢は20代半ばぐらいがボリュームゾーンとなっていたが、なかには私のように30代の者も数人いた。高身長の者が非常に多く、顔立ちが多少地味でも身長が180センチを超えていれば、ホストとしての評価はかなり高くなるようだ。

「高身長」に対する社会的評価が非常に高い

 客がホストを呼ぶと、手の空いているホストは一列に並んで客室へ入り、客の前に立つ。その際も身長順に並ばされることがあり、中国人にとって「イケメン」と「高身長」は切っても切れない関係にあるのだと思い知らされた。中国ではホテルやレストランの従業員の求人募集などでも「男性は170センチ以上、女性は160センチ以上」などと、身長で選別されることがよくある。「高身長」に対する社会的評価が、非常に高いのだ。

客のテーブルにはフルーツ盛り合わせなどが置かれる

 ホストたちの顔立ちは、ぱっちり二重の正統派イケメンが目立ったが、全体的な系統としては、韓流スターのような“男らしさ”を強調した雰囲気。髪はジェルやムースでガッチリと固めており、中性的なジャニーズ系は皆無であった。服装は日本のホストよりもラフで、スポーツブランドのスウェットやダメージ加工したデニムパンツを穿いている者などがいた。

 待機中にホストの一人に声をかけてこの仕事を選んだ理由を聞くと、「友達に誘われて何となく始めた。昼夜逆転の生活になるのがしんどい」と語っていた。出身地は浙江省や江蘇省など、上海近郊が多いようだ。

待機中のホストたち