――ホストクラブ。
今、新宿を新宿たらしめているのが、このビジネスであることはまちがいない。
六本木、渋谷、池袋、五反田、上野など東京にはいくつもの歓楽街があるが、どの町もホストクラブの数は片手でかぞえるくらいか、ゼロである。だが、新宿の一角にすぎない歌舞伎町には、200店以上ものホストクラブがひしめいているのだ。
今回、風俗の世界を舞台にした小説集『世界で一番のクリスマス』(石井光太著、文藝春秋刊)の刊行イベントが、「歌舞伎町ブックセンター」で開かれた。昨年オープンした現役ホストも出勤する書店だ。
ここを経営する「Smappa! Group」の会長で、歌舞伎町にホストクラブ数店の他、バーなども手掛ける手塚マキ氏(40歳)に、ホストの世界を案内してもらった。
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歌舞伎町のホストクラブは増加の一途
「歌舞伎町では、ホストクラブが右肩上がりで増えています。毎年というより、毎週のように新規店舗ができている状態です。その分、市場はどんどんふくらんでいっています。おおよそですが、1店舗あたりの売上は、指折りの人気店なら1カ月1億円くらいいきますが、平均して1000万円ほど。そうすると歌舞伎町全体で20億円から30億円。年間で300億円以上になるのです」
こういう話を聞くと、新宿のホスト業界だけで一大産業だ(例えば日本全体のプロテイン市場が約300億円だ)。
実際に手塚が経営するホストクラブを5店舗ほど見学させてもらった。それだけで、店によってかなりバリエーションがあった。
20歳そこそこの私服のホストが中心の元気な店、高価なブランデーがショーケースに入って飾られている店、ホスト歴30年という白髪の紳士ホストが働いているバー風の店……。
開店前だったので、清掃を終えたホストたちが客席にすわって携帯で女性客に連絡をとったり、女性用トイレの装飾が絢爛豪華だったりしたのが印象的だった。
これだけ市場規模が膨らめば、参入する人も増える。
現在、歌舞伎町のホストクラブの多くが、グループ経営となっている。一つのグループが複数の店舗をもっており、手塚のようにホストクラブ以外の飲食店を経営しているところも少なくない。
「歌舞伎町のホストクラブは競争が激しい分、サービスは日本で一番です。だから、地方、たとえば横浜でもどこでも進出すれば、他を圧倒するくらいに人気がでる。これが歌舞伎町でホストクラブをやっている者の強みですね。ただ、現在はあまりに乱立しすぎていて、サービス低下が叫ばれています。店の数をどんどん増やすのでサービスの質が落ちている」