「毎月勤労統計」の改ざんについて首相官邸の関与があったのではないか――。統計不正問題についての追及が国会で続いているが、参考人がよくわからない理由で欠席を連発した。過去には「記憶にない」を連発していたこともある。統計不正問題の参考人らの発言は二転三転しており、非常にわかりにくい。彼らの発言を追ってみた。
姉崎 猛 元厚生労働省統計情報部長
「午前中は調子が悪い」
朝日新聞デジタル 3月5日
藤沢勝博 厚生労働省政策統括官
「急に具合が悪くなった」
朝日新聞デジタル 3月5日
3月4日、参院予算委員会で新年度予算案の審議が始まったが、この日は統計不正問題をめぐって出席を求められていた参考人の姉崎猛・元厚労省統計情報部長と藤沢勝博・元厚労省政策統括官が相次いで欠席した。当時の厚労省で統計部門のトップだった姉崎氏の欠席の理由は「午前中は調子が悪い」、藤沢氏の欠席の理由は「急に具合が悪くなった」だった。また、野党は西村清彦・総務省統計委員長の参考人招致も求めていたが、西村氏は対応が難しいとして欠席した。与野党が合意しても、参考人には出席の義務はない。
質問を予定していた国民民主党会派の森ゆうこ氏は「お見舞いを申し上げるしかない」と皮肉をこめて答弁。立憲民主党の福山哲郎幹事長は、中江氏と姉崎氏について「証人喚問も含めて考えなければいけない」と言及した。なお、姉崎氏は2月22日の午前中に開催された衆院予算委員会には出席している。「午前中は調子が悪い」という欠席の理由は答弁逃れとしか思えない。
中江氏が厚労省に伝えた「問題意識」の中身
中江元哉 前首相秘書官(現財務省関税局長)
「経済の実態を適切に表すために、タイムリーに表すために、改善の可能性について考えるべきではないか、という問題意識を伝えた記憶がある」
FNN PRIME 2月15日
2月15日に行われた衆議院予算委員会に参考人として安倍晋三首相の元秘書官である中江元哉氏が出席した。中江氏は秘書官だった2015年3月、毎月勤労統計について厚労省から説明を受けた際、サンプルの入れ替えによって賃金の数値が大幅に変わってしまう調査手法について「問題意識」を伝えたと述べた。「問題意識」を伝えた相手が姉崎氏である。
中江氏は「政府に都合のいいデータが出るように、統計手法上、不適切な方法をとらせる、そういった意図に基づくものでは全くない」と首相官邸としての関与を否定したが、なぜ首相秘書官が「改善の可能性」を伝える必要があったのかは謎のままだ。安倍首相は自らの関与は否定しつつ、「秘書官が見識をもとに意見を述べるのは当然」と述べている(産経新聞 2月25日)。