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日比谷高校“まさかの”2次募集 なぜか学芸大附属校長が「不適切表現で反省」のワケ

「公立高校は辞退できない」という不文律はアリなのか

 2019年3月4日、東京都立日比谷高校(以下、日比谷)が2次募集を行うと発表した。1次募集でも定員より多めに合格者を出していたが、予想以上に入学辞退者が出たためだ。このような事態は現行の都立高校入試制度になって初。

 都立・県立であれ、私立であれ、国立であれ、だいたいどこの学校も、他校に抜ける数を予測して、定員よりも多めの合格者を出す。その読みが難しい。単純に言えば、今回は東京学芸大学附属高校(以下、学大附属)が入試関連日程を変更した煽りを受けて、日比谷の読みが狂ったというだけの話である。

 昨年まで、学大附属の合格者は、公立高校の合格発表を待ってから入学手続きを行うことができたが、今年から、学大附属は、公立高校の合格発表の前に入学手続きを締め切ることにした。合格者の“囲い込み”である。しかし蓋を開けてみると、公立高校の合格発表後、予想以上の入学辞退者が出たようだ。

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 学大附属の入学手続きには5万6400円が必要だ。決して安い額ではない。わざわざそれを払っておいて、公立高校に合格していたら公立に進むということは、公立高校が第1志望であり、学大附属が第2志望だということ。ここで「公立高校」とはほぼすなわち日比谷または神奈川県立横浜翠嵐高校(横浜翠嵐)のことである。

異例の2次募集を行った日比谷高校

東大合格者数で日比谷が学大附属に肩を並べた

 2018年の東大入試合格者数は学大附属49名、日比谷48名で完全に互角。数年前までは学大附属が“格上”とされていたが、日比谷が肩を並べたことで受験生の志望優先順位が変化した。横浜翠嵐は、東大の進学実績は学大附属や日比谷におよばないが、受験指導に熱心で、躍進校として注目を集めている。今回の混乱の前提として、これらの公立進学校の人気上昇がある。

 予想以上の入学辞退者が出てしまった学大附属は慌てて大量の「繰り上げ合格」を出した。日比谷はその煽りを食った形だ。

 学大附属と日比谷が相互に「抜き合っている」状態。それで入学者の「歩留まり」の読みが狂うのはいたしかたない。「日比谷の入試担当者には災難だった。学大附属にも事情があるし、結果的に混乱が生じてしまっただけである」。私はそうとらえていた。

日比谷高校の2次募集人数は5人。最終的に163人が受験し、倍率は32倍を超えた(日比谷高校HPより)