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温泉旅行のナカ1日を楽しんでほしい

 まずJR西日本が先手を打った。越後湯沢から和倉温泉に直通する特急は、北陸新幹線開通に伴って廃止。近畿圏から和倉温泉へ直通する特急は削減して1往復とした。しかし、新たに金沢発和倉温泉行きの特急「能登かがり火」と、きらびやかな内装の観光特急列車「花嫁のれん」を新設。北陸新幹線と近畿圏からの特急の乗り継ぎに対応した。

 そこで、のと鉄道が勝負に出た。観光列車「のと里山里海号」だ。南から和倉温泉へやってきお客様を、さらに北へ行く鉄道に乗ってもらうためだ。

 

 温泉客のすべてが旅館にこもりきりというわけではない。一日中、温泉に浸かっていればのぼせてしまうし、さりとて部屋で寝転んでいても退屈する。だからたいていの温泉ツアーは1泊で帰ってしまう。温泉町でお客様が滞在するためには、楽しい時間を演出する要素が必要だ。もう1泊してほしい、ナカ1日を楽しんでほしい。かつてその役目は卓球や芝居や歌謡ショーだった。しかし、アトラクションのひとつとして観光列車の需要はありそうだ。

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食事付きコースもある

「のと里山里海号」は2種類のコースがある。土日祝日及び指定日の「ゆったりコース」の下りは七尾駅・和倉温泉駅で乗車し、穴水駅で降りる。上りは穴水から乗って和倉温泉駅・七尾駅で下車する。全席指定で、料金は大人1,500円、小人1,000円だ。

 和倉温泉駅から穴水駅までは通過扱いとなる。通過といっても特急のように速くはない。むしろ遅い。景色の良い数カ所で一時停止し、アテンダントさんが解説してくれる。途中の能登中島駅では10分ほど停まり、駅で展示されている鉄道郵便車を見学できる。料金には帰路の運賃が含まれている。

昭和44年製の郵便車。昭和61年に鉄道郵便輸送が廃止。「走る郵便局」も廃車となった
「鉄道郵便車」は車内に区分室を備え、走行中に4人の職員が仕分け作業を行った

 水曜日を除く平日の「カジュアルコース」は各駅停車だ。普通列車に「のと里山里海号」を連結して運行する。どの駅から乗ってもいいし、どの駅で降りてもいい。ただし、乗車券に加えて、1乗車ごとに300円の乗車整理券が必要だ。「ゆったりコース」と同様に、景色の良い数カ所で一時停止し、アテンダントさんが解説してくれる。能登中島駅で鉄道郵便車を見学できる。

 
牡蠣の養殖笩の向こうには、能登島にかかるツインブリッジ。背後には立山連峰。景色の良い場所ではゆっくり走る

「カジュアルコース」で七尾から穴水まで乗ると、乗車券が830円、乗車整理券が300円で、合計1,130円かかる。しかし帰路の運賃を加えると1,960円だ。「ゆったりコース」の1,500円には帰路の運賃も含まれているから460円もトクという計算になる。「カジュアルコース」は「全区間乗る時間はない。能登中島で鉄道郵便車を見て帰りたい」という短距離利用に向いている。全区間に乗るならオススメは「ゆったりコース」だ。

のと鉄道の終点・穴水駅