「本当にこの子たち、高校生なのかなぁ。ビックリするくらい、しっかりしているな」
そんな思いを巡らせたのは、ある高校の野球部の活動を見せてもらった時だ。
昨年12月、鳥取県の県立米子東高校野球部に取材に伺う機会があった。鳥取でも1、2を争う進学校である同校だが、昨秋の中国大会では倉敷商業(岡山)や開星(島根)といった甲子園常連校を立て続けに撃破。準優勝という成績を収め、センバツ出場をほぼ確定的なものとしていた。そこで、部員わずか16名の県立の進学校が躍進できた理由を探りに現地に向かったのである。
「今日は子どもたちと野球交流会の日。練習はお休みです」
「文武両道」の高校らしく、どんな効率的な練習をしているのか。それともなにか新しい、革新的な手法でのトレーニングをしているのか――そんなことを考えながら現地で練習を見学させてもらおうとすると、チームの川下忍部長から、意外な答えが返ってきた。
「実は今日は地域交流の一環で、市内の学童保育施設に通う子どもたちを訪ねて野球交流会をやる日なんです。通常の練習はお休みなんですが、もしそれでも良ければ見て行ってください」
2017年の12月から行っているというこの活動。プロ野球チームや社会人チームがこのような活動をすることはよく耳にするが、公立高校の野球部が取り組むのは、全国的にも非常に珍しい。その狙いについて、川下部長はこう説明する。
「いまは野球をやる子どもたちの数も昔と比べて減ってきています。なので『野球の面白さ』を知ってもらうために、定期的に交流活動をしているんです。鳥取はプロ野球のチームがあるわけでもないし、強豪の社会人チームがあるわけでもない。そうなったら、高校の野球部がやるしかないでしょう」