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家事代行の「経済的な壁」と「心理的な壁」

──お総菜やお弁当を買う人は増えていますが、家事代行にはまだ抵抗を感じている人がいるのではないでしょうか。楽天インサイトが行った2016年の料理に関する調査では、料理が面倒と感じたときに、どのような行動を取ることが多いかを聞いたところ、「出来合いのものを買ってくる(27.2%)」、「インスタント食品を食べる(20.8%)」、「残り物を食べる(15.1%)」の順で、「誰かに作ってもらう」は2.1%でした。そこには「経済的な壁」だけでなく、「心理的な壁」もあるような気がします。「家事代行は贅沢」と考えられている背景には、どんなものがあったと思いますか。

 

飯田 近年、外食産業は縮小傾向にありますが、中食(調理済みの食品)など食の外部化率は逆に伸びていて、家庭の食卓のうちの4割以上を外部化しているというデータもあります。でも、お惣菜やお弁当は自分で買ってきて家で食べるものですよね。そう考えると、「自分ができることを、お金を払って人にやってもらう」という行為が「贅沢」というイメージにつながっていたのではないかと思います。

 仕事が忙しいと、食事が犠牲になってしまいます。我が家もそうでした。働いて、家に帰ってきて、子どもをあやしたりなだめたりしながら、義務感で作る料理は苦痛です。それをプロに依頼して余裕が生まれることで、料理に前向きになったり、料理の文化的な価値が見直されたりするきっかけにもなるのではないかと思っています。

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なぜ外資系コンサルを辞めて起業したのか

──飯田さんはもともと、外資系のコンサルティング会社でバリバリ働かれていて、産後体調を崩したことが、起業のきっかけになったそうですね。

飯田 はい。子どもを産んで、がらっと考え方が変わりました。

 前職では、アナリストとして勤務していたのですが、産休・育休を経て5カ月ほどで職場復帰をした後、むりをして風邪をこじらせ、体調を崩してしまったんです。立つこともできなくなってしまって、家事代行を頼んだら、偶然「産後ドゥーラ」という産後ママのケアをする専門家の方が来て、人参の切れ端とオリーブオイル、はちみつでラぺを作ってくれました。

 冷蔵庫はほとんど空っぽで、自分だったら絶対に捨てちゃう素材を使って料理を作ってくれたことに感動しましたし、「専門家が経験と知識を使って、自分のためにご飯を作ってくれた」ということや、「産後ママの体調にいいんですよ」とこちらをおもんぱかってくれる気持ちが本当にうれしくて……。

 私の場合はたまたま来てくれた人が産後ドゥーラだったというラッキーな偶然だったので、これを必然にできるしくみがあったらいいだろうなと、起業を思い立ちました。