子どもが生まれても仕事を持つ母親が7割を超え、なお増加傾向にあるなか、いまだに「料理は母親がするもの」という概念が根強く残っている。

 お節や節句など日本の伝統行事とも深いつながりがある家庭料理。しかし、それを「母親が子どもに継承していく」のには限界が来ている。現在1都3県に出張作り置きサービスを提供しているシェアダインは、折々の行事食にも対応している。「日本の食文化を次の時代に残していきたい」と語る飯田陽狩代表取締役社長(CEO)に話を聞いた。(全2回の2回目 #1より続く)

シェアダインCEO飯田陽狩さん ©文藝春秋

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──いまや核家族、共働きが当たり前の社会になりましたが、「料理は母親がする」という意識は根強く残っています。食卓に並ぶ料理を他人に任せることへの抵抗感が強い人もまだ多いのではないでしょうか。

飯田 実は、私たちがあえて「代行」という言葉を使わず、「出張作り置きサービス」という言い方にこだわっているのも、そこにあります。「代行」では、本来家庭でやるべき仕事を「代わってもらう」というニュアンスがあるからです。

 これだけ社会が変化しても、まだ日本では「家庭の食卓を守ることが母親の役割」という意識は根強いですよね。2年前、サービスを開始する前に行ったヒアリングでは、掃除や整理整頓は人に頼めても、「口に入れる食事を他人に頼むのは最後」という声も多く、サービスの普及は難しいかなと悩んだこともありました。

 でも、実際にサービスがはじまってみると、各家庭の悩みやニーズをお聞きして、プロが一緒に食卓を作っていくことの意義や有効性を理解してくれる方が多く、おかげさまで利用者も増えてきています。

シェアダイン提供

「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」が描く「よき母」のイメージ

──「料理は女性が担うもの」という世間のイメージの根幹には何があると思いますか。「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」などの国民的アニメでも、台所に立っているのは母親ですよね。

飯田 これまで母親が家庭の中で担ってきた役割や、社会が作り上げてきた「よき母」みたいなイメージがあるのかなという気がします。でも、現実にはフネさんとサザエさんのように母娘が台所に立ったり、母親が長い時間台所に立つ機会は減っていますよね。

 ここ数年でだいぶ「食事は母親がつくるもの」という概念も変わり、「家事代行」がブームになったりもしましたが、利用する人の意識も「時短したい」「便利だから」というものから、私のように産後体をこわして意識も生活も変えざるを得ない状況になって初めて「家族で母親の役割を見直す」というケースも増えているように感じています。

 シェアダインには男性の料理家さんもいます。「家事代行」というと、「子育てがひと段落した女性が家に来る」というイメージも打ち破りたいですね。