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どんなときも「優勝」と言い続けること

 与田監督はこれまでいつどんなときでも「優勝」と言い続けてきた。監督就任記者会見では「優勝、それだけを目指して戦っていきます」と語り、秋季キャンプでも選手やコーチらを前に「優勝したい。勝ちたいんだ」と訓示した。年が明けてからの球団の年賀式では「誰に何と言われようと、遠慮なく優勝の二文字を目指して戦っていきたい」と高らかに宣言。春季キャンプ最後の練習試合で巨人に手痛い逆転サヨナラ負けをくらったときも、「このままでは、とても優勝なんかできない」と優勝を引き合いに出して選手たちを叱咤した。

 開幕を3日後に控えても与田監督の姿勢は変わらない。色紙を渡されると「優勝しか書かないよ」と言ってペンを走らせた。書いた言葉はもちろん「優勝」。与田監督は今年1月に開かれた激励会で「われわれがその(優勝という)言葉、そのポジションを狙わなければ、絶対に選手たちも意識が強くなっていかないと思う」と語っていた。つまり、「優勝」という言葉で意識改革を行っているのだ。与田監督につられる形で91歳の白井文吾オーナーまでも13分間のスピーチで26回も「優勝」と口にしたらしい。熱はファンにも飛び火しており、ナゴヤドームはオープン戦から連日満員、ファンたちが集まって「優勝」と怪気炎をあげることも増えてきた。優勝だァ!

 与田監督は厳しいことも言い続けてきた。就任早々、1軍の選手には「自分が今のカープに入ったとき、レギュラーになれるのか」という問いを突きつけ、2軍が定位置になっている選手たちには「それだけ力がないことを自覚してほしい」と檄を飛ばした。インタビューでは「結果が出せないということは当然、個々の能力が低いと思う」と指摘し、複数ポジション制を提唱して「やりもせず無理と言うな」と煽り立てた。2軍からキャンプスタートした藤井淳志、平田良介、大島洋平らベテラン選手たちにも「勘違いをするなよ」と釘を刺している。ただし、突き放すようなことは絶対に言わない。与田監督のインタビュー(だいたいどれも長い)を熟読すれば、そこには丁寧なロジックの積み上げがあり、指導者と選手とのコミュニケーションによって課題を見つけ、クリアしていこうという呼びかけが必ずある。内部(選手)にはシンプルで簡潔に、外部(メディア)には長く丁寧に語るのが与田監督のコミュニケーション術だ。

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 もともとドラゴンズの選手に力がないわけじゃない。岩瀬さんは「優勝できるだけのポテンシャルは十分あります。ただし、その可能性を高めるためには、選手個々の意識を変えることが絶対条件」と語っている(『ドラゴンズぴあ2019』より)。ドラゴンズ優勝に必要不可欠なのは「意識改革」なのだ。

 コミュニケーションを重視して選手の力を引き出し、「優勝」を連呼して士気を上げる。与田監督の「言葉による意識改革」は確実に進んでいる。大事なのは言い続けること。そして、それを信じ抜くこと。我々ファンは、根尾昂を引き当てた与田監督を信じてついていこう。順位も「下から二番目」なんてまっぴらだ。今年の中日ドラゴンズは絶対に優勝するのだァァァ!

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