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「少し継ぎ足せば日本一になる」さいたま市の挑戦

見沼たんぼプロジェクトHPより

 これを抜いて日本一の座を奪取しようと考えたのがさいたま市だ。

 同市には見沼田圃(みぬまたんぼ)と呼ばれる江戸時代に開発された約1260ヘクタールの田畑がある。ここを貫く用水の堤には18.2キロメートルの桜並木があった。「少し継ぎ足せば日本一になる」と踏んだ市は2013年、「目指せ日本一!サクラサク見沼田んぼプロジェクト推進事業」を打ち出した。市民から寄せられた約1600万円の寄付などで、ソメイヨシノなど5種類の桜を植樹していった。

 既存の桜並木は1813本だ。これに171本を加えて、20.25キロメートルにした。わずか0.25キロメートルであるが、弘前市を抜いたのである。17年3月に記念の植樹祭を開いた。

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さいたま市見沼田圃の桜 ©AFLO

 ところが、事業を進めている最中に、上には上がいたことが判明する。各務原市だ。なんとさいたま市を10キロメートルも上回る約31キロメートルの桜並木を誇っていた。各務原市は、さいたま市が日本一を目指す前の07年から12年にかけて植樹した。それまでも市民が植えるなどした約8キロメートルの桜並木があり、市が毎年植樹祭をして継ぎ足した。

 同市は1963年に4町、2004年に1町が合併してできた。この旧5町が分断されないよう桜の回廊で結び、「世界一美しい桜の園」(植樹を行った当時の市長の発言)にしたいと発案された。

 構想は大きく、当初は約39キロメートルの回廊にする予定だった。しかし「植えられない場所もあった」(市担当者)という。それでも、とてつもない長さだ。

 このため、さいたま市は「桜の下を全て散策できる並木としては日本一」と言い換えることにした。同市見沼田圃政策推進室は「各務原市には山間部もありますから」と言う。ところが、各務原市河川公園課は「いえ、歩けないところは基本的にありません」と否定する。