4月スタートの『なつぞら』で通算100作目となるNHKの朝ドラ。主演に広瀬すずを迎え、昨年6月から北海道ロケをスタートさせるなど、皆さまのNHKも気合いの入れ方がハンパじゃありません。

錚々たる元ヒロインたちが出演する

『なつぞら』の目玉のひとつが、過去に朝ドラでヒロインを演じた女優が脇を固めること。松嶋菜々子、山口智子、比嘉愛未、貫地谷しほり、小林綾子と錚々たる元ヒロインたちが出演するワケですが、松嶋姉さん、山口姐さんの「は? わたし、まだ全然主演イケますけど?」の圧に加え、最高視聴率62.9%を叩きだし、世界68か国で放送された伝説の朝ドラ『おしん』の主役、小林綾子パイセンも36年振りに朝ドラ再登場。

 普通の若手女優なら萎縮してしまいそうですが、そこは広瀬すず。現場ではあの邪気のない笑顔で「大根めしって超マズそうですよねー」と、おしん先輩に一発カマしてくれそうです。……想像ですけど。

ADVERTISEMENT

『なつぞら』の主演女優、広瀬すず ©文藝春秋

 ある時期までの朝ドラヒロインといえば、『澪つくし』のかをる(沢口靖子)や『純情きらり』の桜子(宮崎あおい)、『ゲゲゲの女房』の布美枝(松下奈緒)といった「芯は強いが自己主張し過ぎず、結婚後は夫を支えて生きる女性」がデフォルトでした。まれに『私の青空』で田畑智子が演じたなずなのような亜流キャラも出現しますが、基本ラインは「皆さまのNHK」コードに合致した安心と安定の女性像。

糸子のアグレッシブで破天荒な生き様

コシノ三姉妹の次女でファッションデザイナーのコシノジュンコ ©文藝春秋

 その概念を完全にくつがえしてきたのがコシノ三姉妹の母、小篠綾子さんをモデルに制作された2011年10月期の朝ドラ『カーネーション』で尾野真千子(老年期=夏木マリ)が演じた小原糸子です。

「なに、寝とぼけたこと言ってんじゃワレ!」的な岸和田の荒い言葉を自在に操り、芯も強いが自己主張もバリバリかます。男性は頼る相手ではなく超える存在か対等なパートナー。欲しいものはグダグダ言わずに自らの努力とパワーで掴み取り、「皆さまのNHK」コードに触れる不倫の恋さえ悩んだ末に進めてしまう。……そんな糸子のアグレッシブで破天荒な生き様は視聴者の心にがっちり刺さりました。