新入社員の皆さん、ビジネスの世界へようこそ。皆さんが働く「企業」は資本主義社会における、唯一のプロフィットセンター(利益を生み出す部門)です。皆さんがこれまで通っていた学校や病院や市役所など、企業以外の部門はすべてコストセンター(お金を使う部門)で、実は企業が生み出す利益で支えられています。

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企業の利益はなぜ大切か

 日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が逮捕され、「利益至上主義」を非難する声が上がっています。しかし、企業が利益を生むことをやめてしまったら、納税者がいなくなり、学校も病院も市役所も存続できません。大学での研究も続けられず、人類の進歩が止まってしまいます。

 資本主義社会では企業が市場で競争しながら成長し、利益を生み出します。その利益を、税金という形で社会に還元させることで人々が共存するのです。従って企業で働く皆さんの第一の目的は、利益を生み出すことです。

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 企業の目的は利益を生むことであり、仕事の目的も利益ですが、日本ではそれが理解されていません。利益はなぜ大切か。30年以上、企業取材をしてきた私が見た、いくつかの場面で説明しましょう。

パイロットのハイヤー出勤は贅沢?

 日本航空(JAL)は2010年、裁判所に会社更生法の適用を申請して倒産しました。この時、再建を託されてJALの会長に就任したのが、京セラ、KDDI(au)の創業者、稲盛和夫さんです。

 倒産した会社はそれまで積み上げてきた借金の返済を一部、免除されますが、そのためには「これをやればきちんと利益を生み出せます」という再建計画を裁判所に提出して認めてもらわなくてはなりません。人員を減らし、コストを削減して、この再建計画を実行するのが稲盛さんの役目でした。

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 大幅なコスト削減を求める稲盛さんに、JALの現場は反発しました。中でも強硬だったのが、パイロットが所属する運航部門です。

 ある日、稲盛さんはフライトの日に、黒塗りのハイヤーがパイロットを自宅まで迎えに行く制度を廃止するよう、指示しました。航空業界の外から来た稲盛さんの目には「パイロットがいくら偉くても、社長のようにハイヤーで送迎されるのは贅沢だ」と映ったのです。

 運航部門のトップだった植木義晴専務(のちに社長、会長を歴任)が稲盛さんに噛み付きました。

「フライト当日のパイロットは、重さ10キロ近いマニュアルや数日分の着替えが入った大きなスーツケースを引いて出勤します。彼らを満員電車に乗せたら、仕事の前に疲れてしまい、万全の状態で操縦桿を握れません」