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繰り返される「今どきの若いものは……」

 そもそも新入社員への扱いというのはどこの会社でもそうだけど、本当に理不尽だ。命じられてないことを率先してやろうとすると「勝手に動くな!」と怒られるし、だからといって命じられたことのみを粛々と遂行しようとすると、この同期のように「言われたことしかやらない」とやはり怒られる。

 毎年毎年どこかで繰り返されている光景だし、「『今どきの若いものは……』という言葉は古代エジプトの碑文にも書かれてる」などというまことしやかな伝説まで流れるぐらいにステレオタイプなのだけれど、なぜか古株の社会人はこれをいつまでもいつまでも繰り返す。

 世代交代しても、昭和が平成になっても、いつまで経ってもこのステレオタイプだけは同じ。

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 社会人の人生を積み重ねていくと、人はなぜかこのシンプルな「毎年同じ」「昔から言われている」という原理を忘れ去ってしまうのだ。社会人は経験を積み重ねているだけでなく、澱(おり)みたいなものも積み重ねてしまうのかもしれない。

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かつてネットに「若者批判」なんてなかった

 私は1999年に毎日新聞を去って、20世紀に入るころからインターネットやその周辺の文化、技術、ビジネスを支えている人たちと交流するようになった。あのころのネットの世界を担っていたのは1970年代生まれの人たちで、「デジタルネイティブ世代」とか「団塊ジュニア」と呼ばれていた。バブル崩壊後の失われた時代に20代を迎えたので、「就職氷河期世代」「ロスジェネ」などというネガティブな呼称もある。

 いろんな意味でこの世代は悲劇的だったのだけれど、でも20代でネットの世界に出現してきた当時の彼らは、とても輝いていた。中年のオジサンなど誰もいないネット空間を好き勝手に泳ぎ回り、面白い文化をたくさん生み出していた。実社会で彼らを批判していた中高年はたくさんいたけれど(2006年のライブドア事件で、マスコミが堀江貴文さんを始めとする「ヒルズ族」を集中砲火のように攻撃していたのは典型的だ)、ネットの世界には非難なんてほとんどなかった。なぜなら当時の中高年は、ネットなんか見てもいなかったからだ。

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 ところがそれからまた長い年月が流れ、2010年代ぐらいになると何が起きたかというと……。ネットに「若者批判」の言説が溢れかえるようになったのだった。なにか新しいことにチャレンジする若者が現れると「そんなのうまくいかない」「失敗するに決まってる」と嘲笑し、就職しないで起業する若者に「社会人も経験しないで何ができる」と説教する。もちろん全員が全員じゃないが、そういう人が山ほど現れるようになった。