旧東ドイツの巨大スーパーを舞台にしたドイツ映画『希望の灯り』。1981年生まれのトーマス・ステューバー監督は、無口な青年の恋模様を中心に、風変わりな従業員たちのドラマを静かに映し出す。

「これは孤独についての映画。登場人物は、時代や社会から置き去りにされたと感じている人たち。みな孤独を抱えながら、彼らなりのコミュニティをつくっている。宇宙船のような巨大スーパーが、彼らの唯一の居場所なんです」

© 2018 Sommerhaus Filmproduktion GmbH

 ベルリンの壁崩壊から今年で30年。旧東ドイツの秘密警察(シュタージ)の恐怖や、ドイツ再統一に伴う悲劇を描いた映画はこれまでにもあるが、本作に登場するのは、過去への郷愁を心に秘めた人々。

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「東側と西側では、賃金を始め今も大きな差がある。僕は今も東側で幸せに暮らしているけど、『昔の方がよかった』と口にする年配の人もいます。もちろん、旧東ドイツ時代の方がよかった、なんて言うつもりは全くない。僕は政治家ではないし、何らかのメッセージを伝えたいとも思っていない。ただ、再統一に強い衝撃を受け、いまだに立ち直れずにいる人々に光をあて、その生活を誠実に描きたかった」

© 2018 Sommerhaus Filmproduktion GmbH

 前作『ヘビー級の心』でも、時代に取り残された元ボクサーの葛藤を描いている。

「きっと僕はメランコリックな人間なんだ。夢に手が届かなかった、そんな思いを抱える人たちが持つ侘しさや哀愁に惹かれるんだと思う。そこから生まれるユーモアにもね」

INFORMATION

映画『希望の灯り』
4月5日よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開
http://kibou-akari.ayapro.ne.jp/