いまから30年前のきょう、1987年6月6日、イギリスのロック・ミュージシャン、デヴィッド・ボウイが、ベルリンの壁の西ベルリン側でコンサートを開催した。
第二次大戦後、分断国家となったドイツは、かつての首都ベルリンも東西に分かれた。社会主義国である東ドイツの建国にともない東ベルリンが同国の首都となったのに対し、資本主義圏である西ベルリンは、東ドイツ領内に取り残された陸の孤島と化した。ベルリンの壁は、東西ベルリン間の住民の移動を遮断するため、1961年に東ドイツにより東西ベルリンの境界線上に築かれたものだ。
ボウイは1970年代の一時期、西ベルリンに在住している。このとき制作されたアルバム『ロウ』『ヒーローズ』『ロジャー』は「ベルリン三部作」とも呼ばれ、ボウイの傑作として名高い。『ヒーローズ』の表題曲では、ベルリンの壁の監視塔の下でデートを重ねる恋人たちが歌われた。
ベルリンでのコンサートで、ボウイは観衆にドイツ語で「今夜はみんなで幸せを祈ろう。壁の向こう側にいる友人たちのために」と呼びかけた。このとき会場に設置されたスピーカーのうち4分の1は、東ベルリンに向けられていた。壁の向こう側には、コンサート前から若者たちが集まり、その数は5000人にもふくれあがる。終演後も群集はなかなか立ち去らず、東ドイツ当局による逮捕者も出た。
コンサートを通じて西側の「自由」を知った人々は、その2年後、1989年11月にベルリンの壁を崩壊させることになる。昨年、2016年1月にボウイが亡くなったとき、ドイツ外務省はツイッターで「壁の崩壊に力を貸してくれてありがとう」と弔辞を送った。