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「M-1グランプリ2018」を批判した2人の「顔」

おぐら 第一芸能界の内輪揉めといえば、「M-1グランプリ2018」の判定をめぐる騒動がありましたよね。M-1終了後の打ち上げの席で配信した動画で、とろサーモンの久保田さんやスーパーマラドーナの武智さんが審査員を批判して、物議を醸しました。

マキタ そのニュースを見たときに、真っ先に2人の「顔」のことを思った。芸能界にハマりきってない顔というか、“あっち側”の顔をしている。あくまで業界的にだけど、悪い意味で彼らはピュアなんだと思う。

おぐら 自分が芸能界にいる自覚を持っていたら、あんな一切得にならないことは言いませんよね。

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マキタ 本物のプロはもっと狡いからね。同じ芸人でも、業界の側にいる自覚のある人たちが、一斉に「あっち側」にいる彼らを無礼だと言っていたのが興味深い。

おぐら そもそも「M-1グランプリ」は、業界の先輩たちの審査によって「あっち側」から「こっち側」に来られる切符を渡す大会みたいに思われていますが、そんな単純なものではない。

 

マキタ 久保田くんはとろサーモンとして優勝までしているのに、いまだに野生の根性とかインディペンデント魂が抜けてないよ。

おぐら だからこそ、テレビの人気者たちとは一線を画す危ない雰囲気を保ってます。

マキタ でもそう考えると、明治維新の頃の伊藤博文とか、維新側の人たちって大抵ならず者じゃん。維新が成功してエスタブリッシュメントになったから慌てて上流階級のマナーを身につけて、下にも降ろしていく。お笑いの世界で天下を取った人たちって、それに似てるんだよね。

おぐら 若い頃には散々しきたりを破ってきたのに、いざ自分が権力者になった途端に非礼を許さない態度に出る人は、どの世界にもいます。

マキタ だからあのM-1の審査員をめぐる一件は、吉本主催の大事なイベントで、吉本内にいる下の人間が盾突いたから、上の人間が「こら!」って叱った内輪揉め。それをメディアがさも重大事件のように大々的に伝えただけで。「あれは内輪揉めだね」って突っ込む人が誰もいなかったのが、なんか気持ち悪かった。

おぐら そういう意味では、吉本の内輪揉めはお笑い界全体の問題だっていうのを象徴してました。

 

マキタ 「あのM-1グランプリを汚した」みたいなことを言う人もいたけど、関西お笑いヒエラルキーのお家騒動なんて、世間の人たちにとっては「そんなの知らねえよ」って感じでしょう。結局騒いでいたのは、権威がなくなると困る内側の人たちだけで。久保田くんは昔気質の芸人らしく、権威に噛み付いたんだよ。

おぐら そんな「M-1グランプリ2018」で優勝したのが、当時25歳と26歳のコンビ、霜降り明星でした。もちろんこれは最年少記録で、もはやM-1は「苦節何十年の中堅がようやく実力を証明して脚光を浴びた」っていう性質のものではなくなり、新しいフェーズに入りましたね。

マキタ そっちのほうがよっぽど健全だよ。だってM-1で脚光を浴びても売れなかった中年のコンビがごろごろいるし、久保田くんのように長い苦節の時期に根性がねじ曲がったりしちゃうんだから。

おぐら 売れたとしても、優勝者ですらテレビのバラエティ番組ではヒエラルキーの最下層からのスタートですし。